恥ずかしそうに斜め上を見た。広島野村祐輔投手(26)は、手袋を取り「いいぞ祐輔」コールを浴びた。4回の第2打席。2打席連続の右前適時打だ。2回は高めの直球を、4回はシュートを打った。「(打撃は)好きですよ。2打席とも好機だったのでなんとかしたかった。あっさり終わるとチームにも流れが来ない」。右翼長野がスライディングを試みたかどうかの違いはあれど、思いを乗せた打球は、同じようにグラブをかすめて落ちた。

 「すごくうれしい。こんな巡り合わせもあるんですね」と喜んでいた明大の先輩・巨人江柄子との対戦だった。野村にとって、3学年上にあたり、中日岩田とともに「いつも輪に入れてくれた。僕は中継ぎだったけど、しょっちゅう一緒だった。練習もずっと3人だった」という。「かわいがってもらった先輩。プレーでは勝ちたかった」。2本の適時打で先輩に恩返しした。

 投げても捕手石原に導かれ、低めを丁寧についた。チェンジアップ、カットボール、シュートなど持ち球をちりばめ、5回2/3を投げて8安打1失点。6回に4連打を浴びて降板し「2死からの失点。申し訳ない」と悔やんだが、黒田に並んでリーグトップタイの4勝目を挙げた。

 チームも1日で首位に返り咲き。貯金を5に戻した。緒方監督は「今日は祐輔でしょう。打っても2安打。今季は打席でもいい意識が見える」と“明大魂”の右腕を絶賛した。今日5日はこどもの日。セ・リーグもこいのぼりの季節になる。【池本泰尚】

 ▼投手の野村が2、4回に適時安打。1試合に2本の適時安打を放った投手は14年8月5日メッセンジャー(阪神)以来で、広島では99年6月28日紀藤が中日戦で記録して以来、17年ぶりだ。本塁打を含め、投手が打った打点付きの安打は今季9本となったが、4月7日メッセンジャー(阪神)8日大野(中日)5月1日原樹(ヤクルト)4日野村2本と、半分以上の5本が巨人戦で出ている。