耐えに耐え、しのびにしのんだ完封勝利だ。阪神先発能見篤史投手(37)は過呼吸に似た状態とみられるアクシデントに見舞われながら、5回を無失点。2度の満塁機を迎えるなど3安打4四球で走者をためながら踏ん張った。6回から安藤、高橋、藤川、ドリスとつなぎ、能見には3試合ぶりの4勝目がついた。守護神マテオも1軍復帰した日。投手陣再整備への針が進んだ。

 試合開始直前、JRA池添騎手の始球式が行われる。マウンド付近で見守っていた先発のベテラン能見は、直後にベンチへと下がった。テレビに映し出されたのは、スポーツドリンクを飲むシーン。金本監督は「立ち上がりは体調がおかしかった。呼吸がちょっとね。酸欠になったのかはわからないけど」と説明した。過呼吸に似た症状に襲われた模様だが、それでも意地の99球で5回を3安打無失点に抑えた。

 「まあ、まあ、いろいろあるんで」

 試合後の能見は詳しい説明を避けたが、マウンドではいつもの冷静な姿とは確かに違った。序盤からストレート、変化球ともに精度を欠き、5イニングで4与四球、1暴投。2回、5回と2度も満塁のピンチを迎えた。5回2死一、二塁で中島に四球を与えたところでは、珍しく怒りをあらわして滑り止めのロジンバッグを地面に投げつけた。

 「1つ勝つのは大変なので良かった。(粘れたことが)一番。ゼロに抑えられたことが良かった」

 2度の満塁機は内野ゴロで3アウト目を奪って本塁だけは踏ませなかった。完封リレーの流れをつくり、3試合ぶり、37歳初勝利となる今季4勝目を手にして熱投は報われた。ただでさえ左肘違和感の影響から、100球前後のリミット登板が続くベテラン左腕。かつての左腕エース井川慶が灼熱(しゃくねつ)の京セラドーム大阪で見舞われた“酸欠アクシデント”を思い起こさせる異常現象が、大事でないことを祈るしかない。【桝井聡】