今日こそ勝ちにつながるヒットにしたかった…。日米通算2000安打達成から一夜明け、阪神福留孝介外野手(39)が2安打2打点と奮闘した。3回、左前に同点打。8回は一時勝ち越しとなる左中間二塁打を放ったが、悲劇のサヨナラ負け…。動揺するチームの中で、すぐに中谷へフォローの声をかけた。何があろうが前に進むのが福留流だ。

 メモリアル安打から一夜。3番福留が休むことなく2本のヒットを重ねた。「個人的なことは終わった。チームが勝つことを考えてやっていきたい」。試合前、区切りをつけ、リスタートする決意をあらためて口にしていた。

 その思いを体現した。まずは1点を追う3回。2死一、二塁の場面だ。左腕戸田の変化球にバットを当てると、打球は三遊間をはずんだ。「いいところを抜けてくれた」。狙ったように守備の間を抜く一打。技ありヒットで走者を呼び込んだ。

 2-2と同点に追いつかれて迎えた8回にも、極限の集中力を発揮する。1死一塁から4番手一岡のファーストストライクをガツン。完璧につかまえて左翼へ運んだ。阪神ベンチも大盛り上がりの適時二塁打。二塁ベースに到達した福留も、両手をたたいて喜びを表現するほどだ。

 指揮官のハッパに即、応えた。前日25日の試合後。日米通算2000安打達成の興奮冷めやらぬロッカールームで、名球会の先輩でもある金本監督は「もう少し打点とホームランはほしい気がするよね」と注文していた。今季はこの試合まで3本塁打、22打点。指揮官の言葉を知ってか知らずか、「指令」をすぐさまグラウンドで遂行した。

 まさかの幕切れに歓喜と悲鳴が入り交じった。阪神の選手たちが重い足取りでベンチに戻る中で、右翼手福留はすぐに中堅中谷に近寄った。肩に手を掛けて語り掛けた。

 「誰にでもミスはある。お見合いをしたわけではない。これでプレーが小さくなったらダメ。これも1つの勉強だから」

 ショッキングな出来事が起こり、誰もが戸惑う。だが、福留は違った。冷静にフォローすべき中谷に近づき、言葉をかけた。阪神には福留がいる。それだけでチームにとって有形無形の価値がある。【桝井聡】