ツキが変わっても「神ってる」! 広島が苦戦していたDeNA戦でラッキーな先制点を挙げ、7月も白星発進だ。3回2死一、三塁で「神ってる」鈴木誠也外野手(21)の打球は平凡な三塁ゴロだったが、相手のミスで先取点をゲット。鈴木は5回にも11号ソロを放ち、黒星が先行するビジターでの快勝に貢献。2位に今季最大9・5ゲーム差をつけて、今日2日にも前半戦の首位ターンが決まる。

 野球の神様は、またしてもこの男にほほ笑んだ。3回2死一、三塁。鈴木が先制機で初球を振りにいった。「スライダーにがっついてしまって、腰が引けてしまった」。平凡なゴロが三塁へ飛んだ。だが、三塁側のため息は数秒後に大歓声に変わった。DeNAエリアンが一塁へまさかの悪送球。走者が生還し、スコアボードに「2」が入った。

 交流戦最後のオリックス3連戦でサヨナラ、サヨナラ、決勝弾の3戦連続の劇弾を放った。緒方監督をして「今どきの言葉で言うなら、神ってるよな」と表現したミラクルボーイだ。今季横浜でのチーム打率はセ・リーグの本拠地で最低の2割2分1厘。神様もサービスする気になったか、これまた横浜が苦手なジョンソンに先制点を贈った。

 神様もタダでほほ笑んだわけではない。もともと数本のバットを寮に持ち帰り、眠っていても思いつけば跳び起きてバットを振るほどの職人かたぎだ。「野球が仕事だと思ってしまったら、やめなければいけない時だと思っています。僕は野球が好きなので」とまで言うほど真剣に向き合う。数日で一気に全国区のスターとなり「たった3本打っただけ。正直やめてほしい」と吐露したこともあったが、こんな若武者が活躍するから広島は強い。

 だから「神ってる打」だけでは終わらない。腰が引けた凡打を次打席で修正。「死球でもいいと思って踏み込もうと。まぐれですけど」。外角高めの直球にバットを合わせ、右中間席に突き刺した。松山に続く2者連続の11号ソロ。これでプロ17発目だが、そのすべてでチームを勝利に導く。それでも「点差が開いているところでしか打っていない」と謙遜。充実感だけに浸らないところも、神ってる一打を呼ぶ要因の1つだろう。

 緒方監督も「本塁打で効果的に加点できた。反省が多い試合だったけど、3連戦の頭を勝てたのは大きい」とうなずいた。6月を11連勝を含む16勝6敗1分けで駆け抜け、首位を独走中。圧倒的強さを誇るホームだけではなく、負け越すビジターでも力を発揮した。7月に入っても広島は、鈴木は、やっぱり「神ってる」。【池本泰尚】

 ▼鈴木の不敗神話続く 広島鈴木が11号。これで鈴木が本塁打を放った試合は今季10連勝となった(1試合2本が1度あり)。プロ入り通算でも1発打てば負け知らずの16連勝中。

 ▼広島が2位(巨人)に今季最大の9・5ゲーム差をつけた。今日2日のDeNA戦に勝つか引き分けると、96年以来20年ぶり6度目の首位ターンが決まる。直近の96年は最大11・5ゲーム差をつけた前半3位の巨人にまくられたが、80、86年は優勝。優勝確率は40%だ。2位に8ゲーム差以上をつけて首位ターンすれば広島では初となるが、球宴までにどこまで引き離せるか。