日本ハム鍵谷陽平投手(25)が、オリックス14回戦(札幌ドーム)で今季初勝利を挙げた。0-2とリードを広げられた7回2死満塁に、2番手で登板。わずか4球でピンチを脱すると、その裏に打線が7点を奪う猛攻で逆転、白星が舞い込んだ。前日22日に2年連続37度目の夏甲子園を決めた母校北海に、七飯町出身の4年目右腕が祝福の白星を届けた。

 脳裏に焼き付く記憶が、よみがえる。08年夏、鍵谷は1回戦の東邦戦で、聖地のマウンドに初めて立った。北海のエースで臨んだ最後の夏。甲子園の女神は、試練を与えた。野球人生初の1試合3本塁打を浴びる、7回14安打12失点KO。あれから8年。母校は2年連続で夏甲子園出場を決めた。「ふがいない姿を見せられない」。たのもしくなった姿で、祝福の白星を届けた。

 強い信念が、柱になった。2点ビハインドの7回2死満塁、オリックスの打者は糸井。栗山監督は「あえて球の強い投手で勝負しようと思った」と覚悟を決めていた。託された鍵谷が応える。「打者勝負と思った」。先制打を放っていた強打者に変化球を散らす。「直球しか待っていないと思った」。129キロのスライダーで芯を外し、遊飛に打ち取った。その裏に打線が一挙7点の爆発。丹念に投じた4球が、勝運を引き寄せた。

 土台にあるのは、ひたむきに白球を追い続けた日々。甲子園で大敗後、プロ志望届は出さなかった。「大学で、もっと鍛える」。中大で先輩沢村と、プロでは中継ぎのスペシャリスト武田久と出会い、野球人として成長した。

 今季序盤は不振で、4月には出場選手登録を抹消された。復調を模索していた今月21日、南北海道大会準決勝、母校と東海大札幌の試合を観戦した。「刺激になった」。8年ぶりに訪れた札幌円山から、たっぷりの栄養をもらい、迎えたこの日。札幌ドームでは3万越えの観衆が、歓喜した。球児では味わえない興奮が、また力になった。【田中彩友美】