虎が逆襲を期す男のバットで「長期ロード」白星発進や。途中出場の阪神鳥谷敬内野手(35)が、チーム3連勝を呼び込む2安打だ。7回無死一、三塁で代打出場し、勝ち越しの右前適時打。その後追いつかれたが、9回には勝ち越しの好機を広げる二塁打を放った。守備でも8回に美技。3位DeNAとの直接対決を制し、虎はCS圏に4ゲーム差。借金も1桁、9に押し戻した大反攻はまだまだ終わらない。

 35歳。さびない技がある。勝負どころ。経験がモノを言う。鳥谷は“宝刀”を狙っていた。同点とされた直後の9回無死一塁、2ストライク。守護神山崎康の低めツーシームをミートし、左中間へ運んだ。無死二、三塁に好機を拡大。1番高山の押し出し四球、大和の2点打などによる4得点勝ち越し劇に導き、試合後ようやく表情を崩した。

 「まぐれです。バントじゃなく打てだったので。なんとか転がして、最低限自分が残ればいいと思って」

 7月24日広島戦、フルイニング出場が667試合で止まった。8試合連続スタメン落ち。この日は同点とした直後の7回無死一、三塁で代打登場し、久保康から右前適時打も放っていた。先頭からの4連打を完成させ、一時は逆転劇の主役を張った。チームが前回対戦で3安打完封を許した天敵打ちだけでなく、最後は守護神打ちで3連勝の土台作り。守備でも8回に「筒香シフト」を自らの判断でさらに強めることで窮地を救ってみせた。

 「いつか、こんな日が来ると、分かっていた。後悔はないよ。後悔しないだけの練習はしてきたつもり」

 数日前、薄暗い甲子園通路。晴れやかな表情で本音を明かした。慣れないベンチスタートが続く日々。イニング間には外野手のキャッチボール相手に立候補し、試合前シートノックで左翼から大声を張り上げる場面も。若手の仕事をいとわず、率先してチームのために…。美談への流れは「そんないいもんじゃないって!」と照れ笑いで否定する。

 「後から出るために準備してるだけ。早めに肩を作っておけば、すぐ守備に就ける。投げにいくまでにダッシュもできるしね。しっかりバットも振ってね。プロ野球選手なんだから、どんな時でも試合に出たら結果を出さないといけない」

 心は折れていない。もう1度居場所を取り戻すため、はい上がる覚悟がある。ベンチスタートの8試合は9打数6安打。CS圏内を争う3位DeNAとのゲーム差を4に縮め、金本監督も「最後もそうだけど、いい仕事をしてくれた。ライナー性の彼らしい打球が出だしている」と納得顔だ。

 「いつ戻すかのタイミングはちょっとね。簡単に戻して(またベンチに)下げるのは避けたい」

 指揮官は今日3日DeNA戦での先発復帰については、否定的なスタンスを変えなかった。鳥谷を外してから、チームが7勝1敗と上り調子なのは事実。ただ、「Xデー」はもう遠くはない。快音が響き続けば、「虎の顔」を外す理由はなくなる。【佐井陽介】

 ▼4位阪神が3位DeNAに勝ち、両軍のゲーム差は4に縮まった。7月23日広島戦に敗れた時点では今季最大の7ゲーム差あったが、阪神は翌日24日の同カードから7勝1敗の快進撃。4勝4敗のDeNAを猛追している。

 ▼阪神は7月31日中日戦に続き、2試合連続の逆転勝ち。7月24日広島戦からの7勝(1敗)中、逆転勝ちが5試合。これで今季の逆転勝利は17度となり、巨人16度を抜いてセ4位となった。なお、最多は広島の31度。