「タナ」がいれば大丈夫! 広島が、CSファイナルステージ第3戦でDeNAに完封負けを喫し、対戦成績はアドバンテージを含めて3勝1敗となった。それでも日本シリーズ進出へ王手をかけている状況は変わらず、1番田中広輔内野手(27)は3打数3安打で今CS打率が8割8分9厘まで上昇。今日15日の4戦目、絶好調の切り込み隊長が今度こそケリをつける。

 「負」を引きずらない。田中は顔色ひとつ変えず、いとも簡単に1球で仕留めた。3点を追う8回1死一塁。2番手三上の初球、内角スライダーをライナーで右前に運んだ。心の強さ。切り込み隊長の持ち味が、ギュッと凝縮された1本だった。

 ただ、猛省したシーンがある。

 田中 僕の走塁ミス。つられてしまった。冷静にならないといけなかった。

 6回、先頭で四球を選んで無死一塁。2番菊池が空振り三振に倒れ、ショートバウンド投球を捕手戸柱が前にはじいた直後だ。振り逃げは成立しない場面だが、菊池が一塁へ走りだす。すると一塁走者田中もつられて二塁へ動きだし、タッチアウトで走塁死となった。高い野球偏差値を誇る男には珍しいミス。それでも即座に切り替え、結果で挽回できる強さを持つ。

 田中 いい感じで打席に立てていると思います。

 1回無死、DeNA井納に1ボール2ストライクと追い込まれながら、145キロ直球をとらえて中前へ。CS初戦から3試合連続で1打席目安打を記録する。3回は先頭で打ち損じるも俊足を飛ばし、二塁内野安打をもぎ取った。

 第1戦は3打数3安打1四球の全出塁。2戦目は1発を含む3打数2安打1四球。そして、この日は3打数3安打1四球だ。計9打数8安打。1年目の14年も含めれば、CS成績は10打数9安打の打率9割と衝撃的な数字が並ぶ。

 田中 負けたんでね。勝たないと打っても意味がない。今日は今日で切り替えて頑張りたいと思います。

 短期決戦。悔しさと反省は力に変えて、次戦に結果でぶつけるだけだ。指揮官は敗戦の弁の中に力強さをにじませた。

 緒方監督 明日もう1回ね。向こうもすごくいいプレーをしている。ただこっちも気持ちで全然、負けていない。ミスがあった中で、その反省を踏まえた上で臨みたいと思います。

 3勝1敗でファイナルステージ突破に王手をかけている状況。圧倒的優位に変わりはない。全国区となりつつある「タナキクマル」。その先頭に立つ「タナ」の勢いに陰りが見えない以上、必要以上の心配はいらない。【佐井陽介】