神ってる突破だ! 広島が3位から勝ち上がったDeNAを8-7で下し、対戦成績を3勝1敗として、1勝のアドバンテージを加えて25年ぶり7度目となる日本シリーズ進出を決めた。1番田中広輔内野手(27)が、神懸かり的なリードオフマンぶりを発揮した。ファイナルステージ4試合で12打数10安打の活躍で最優秀選手賞を獲得。広島は22日開幕の日本シリーズで32年ぶりの日本一を目指す。

 8回の第5打席、スコアボードに示された田中の打率は9割9厘だった。三振に倒れ“陥落”したものの、CS4試合で8割3分3厘。緒方監督も得意のフレーズ「“神ってた”。過去にあんな選手いないでしょ」と称賛する、文句なしのMVPだった。

 打てばヒットになった。「自分でも怖いくらい出来過ぎだった」。3試合12打席11出塁で臨んだこの日、頭の中に邪念はなかった。「打ちたいという気持ちはいつも持っているけど、1番の役割を果たすことを考えた」。1回。カウント3-1から6球ファウルで粘って四球を選んだ。今永には、今季5度対戦して1勝3敗。苦手左腕に立ち上がりから11球を投げさせ、打者一巡の起点となった。2打席目には右前適時打で6点目をゲット。主導権を完全に掌握した。

 短期決戦だからこそ、考えはシンプルだった。「シーズンは自分の成績に一喜一憂してしまうけど、一発勝負ならそれがない。僕には合っている」。出塁という使命にだけ集中した。打撃フォーム、タイミングより、いかにバットを最短で出すかを意識。「形は自分が思っているものとは全然違う」のに、打率8割を超える驚異の数字が残った。考え方にも、打ち方にも無駄がなくなり「早く気づけば良かった」と苦笑いだ。

 CS期間中でも早出特打を志願した。「しっかり自分のスイングをするために左打者は走り打ちになりやすいので」。素手でロングティーを繰り返した。

 本塁打を放った第2戦の活躍で「田中君」とからかわれた同学年の丸から「『田中さん』と呼ばないといけない」とさらに格上げされた。「気を引き締めてこれから練習していきたい」と慢心はない。1週間後の22日には、本拠地マツダスタジアムで日本シリーズが開幕する。CS男からシリーズ男へ。32年ぶり日本一への道筋を切り開く。【前原淳】

 ▼田中が12打数10安打、打率8割3分3厘でMVP。プレーオフ、CSの同一ステージで10安打以上は15年ファイナルS阿部(巨人)11安打、05年2S川崎(ソフトバンク)10安打に次いで3人目となり、打率8割3分3厘は80年平野(近鉄=8打数6安打)10年1S小笠原(巨人=8打数6安打)の7割5分を抜く最高打率。また、同一ステージの6得点は75年加藤(阪急)07年1S福浦(ロッテ)14年ファイナルS上本(阪神)に並ぶ記録と、1番打者として文句なしの働きだった。