日本ハム栗山英樹監督(55)が、執念の采配で日本シリーズへと導いた。3点リードの9回に、左足首痛でベンチ入りを外れた守護神マーティンに代わり、指名打者の大谷をリリーフ起用、万全の態勢で逃げ切った。打線もベテラン田中賢に代えて先発起用した杉谷、4回1死満塁で正捕手・大野に送った代打・岡が適時打を放つなど、勝負手がすべてはまった。

 瞳と瞳を合わせた。心の叫びが、聞こえた。日本ハム栗山監督が、強い絆で結ばれたアイコンタクトで決断した。奥の手を繰り出した。「珍しく、こっちを見ていた」。登板準備を完了した大谷が、視線を向けてくる。言葉は交わさずも、悟った。「僕、いけますよ」、「チームのために勝ちましょうよ」…。そう訴えかけていると確信した。「その思いを止めてしまう方が最悪」と、9回のマウンドへ送り出した。

 最上のフィニッシュを決めた。当初は中4日で、今日の第6戦での中継ぎ起用を検討していた。勝ち越した直後、ひらめいた。投手コーチらへ伝えるとブルペン、ベンチはざわめき、一気に士気が上がったという。「この試合はいくべき」。コンディションを確認し、1日前倒しで投入した。「2度とこれは起こらない。こういう使い方はしない」との一手を繰り出した。

 以心伝心のスーパー・サプライズ。最速165キロを出すなどプロ入りから4年間、伴走してきた至宝も応えた。数々の妙手も効いて就任5年目で、4年ぶり2度目の日本シリーズ切符をつかんだ。「監督やっていてベストゲームかもしれない」。さえ渡る知力の総決算となるタクトでCSを締めた。10年ぶり、自身初の日本一へと挑む力水になった。【高山通史】