侍ジャパンの現在地とは-。強化試合で対戦し1勝1敗と星を分けたメキシカンたちに聞いた。

 お家芸とされるスモールベースボールに疑問の声が上がった。10日の第1戦。1回の攻撃で自滅寸前のメキシコを助けてしまった。制球に苦しむ先発オイエルビデスは、先頭の坂本に四球を許した。2番秋山には初球を送りバントされた。日本がスモールベースボールを敢行したかに見えたが、相手の見解は違った。「1アウトをもらった。初球でやってもらった方が自分にとってはプラス。楽になった」とオイエルビデス。状況だけを見れば相手を助けてしまった。

 WBC本番を想定した強化試合という意識は、メキシコの方が強かったように映った。第1戦の8回に代打大谷が登場すると、ゴンザレス監督は変則左腕のペレスをマウンドへ送った。「大谷が出てきたら使うと決めていた」。この日も1点差の5回2死二塁で鈴木を敬遠。次打者の捕手小林誠の打力データに沿って断を下した。日本ベンチが切り札ではなく代打嶋を選択したのとは対照的。連続四球の押し出しで追加点を許したものの投手起用のシミュレーションは緻密だった。

 敵将はこの2戦を有意義に使った。「小技だけではなくパワーも持ち合わせている」と日本を見ていたゴンザレス監督は「日本はメキシコの個々の能力を知らなかったんじゃないか」と言った。試合後の会見も「いい試合運びをすれば手ごわい日本相手でも互角に戦える」と締めた。侍ジャパンの武器は何か。スモールベースボールだけでは通用しない。世界一の準備がなければ、世界一には届かない。【為田聡史】