ソフトバンクからドラフト2位で指名された江陵・古谷優人投手(17)が16日、帯広市内のホテルで交渉し、契約金6000万円、年俸700万円(金額は推定)で合意。背番号は未定。先天性の脳障害で体が不自由な妹みりあさん(9)へ感謝し、「社会貢献活動をやっていきたい」と決意を語った。

 緊張でこわばった表情が、妹の無邪気な笑顔で一気に緩んだ。「妹の存在があって、ここまで人間として成長できた。こうなれたのは妹のおかげ」とユニホーム姿で小さな体を抱きしめ、優しく頭をなでた。

 8歳下の妹みりあさんは、先天性サイトメガロウイルス感染症で小児脳梗塞を患い、言葉や体が不自由だ。生まれて間もなく、医者からは「歩けない、話せない可能性がある」と告げられた。中3で野球部を引退すると妹のリハビリに毎日付き添い、病院で一緒に積み木を組んだ。妹同様、障害と闘う人たちと触れ合い、考え方は大きく変わった。「プロ1年目でも障害のある方々に何か出来ることはあると思う。今からでもやっていきたい」と具体案を考えている。

 無名の江陵高から、初のプロ選手となる最速154キロ左腕。しなやかな腕の振りとバランス感覚は、ばんえい競馬の騎手だった父輝紀さん(44)譲りだ。北北海道大会で4強入りした今夏は、スタンドにいる妹の応援が力になった。プロ入りが決まり、別れを惜しむように、よく遊び、風呂にも一緒に入る。「やるしかない世界。チームを日本一に導けるような投手になりたい」。妹の笑顔のために、プロでの成功を思い描く。【中島宙恵】