金額よりも条件よりも、現役への思いが上回った。楽天松井稼頭央外野手(41)が19日、仙台市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、減額制限を超える9000万円減の年俸7000万円(金額はともに推定)で1年契約を交わした。「この成績ですから。実力がありませんでした。それでも必要としてもらえたことが、ありがたいです」と、56%ダウンを受け入れた。

 何歳になっても現役で勝負したい。「もう1回レギュラーを取りたい。1打席でも1試合でも、1年でも長くやりたい」と誓った。今季は3月に外野守備で右膝を痛め、長期の打撃不振に陥った。6月には2軍調整も経験し、最終成績は56試合で打率2割1分3厘。それでも同年代の選手が引退を決意する中「僕は、たとえ球団から契約できないと言われても現役を続けたい」と言い続けてきた。衰え知らずの情熱がある。

 来季は42歳になるが、肉体はまだまだ元気。満42歳シーズンでの最多盗塁記録は、56年に戸倉(阪急など)が記録した11。2桁盗塁への意欲を問われ「僕はもともと走ってリズムをつくってきた選手。盗塁もそうだし、走塁もやっていきたい」と決意を明かした。今季は3盗塁でも成功率は10割。梨田監督がチーム全体に走塁意識の向上を訴えていることもあり、現役最年長2桁盗塁への機運は高まっている。

 安部井チーム統括本部長は「ベースランニングなどは今もチームトップクラス。勝利に貢献できる選手として契約しました」と説明。コーチ兼任などの要請はなく、1人の選手として残留要請を受けた。松井稼は「僕はいつもモチベーションが変わらない。毎年、シーズンが楽しみなんです」。生涯現役の心で、プロ24年目のシーズンへ挑む。【松本岳志】

 ◆過去の大幅ダウン 移籍を伴わない同一球団での契約更改で、過去最大のダウン率は16年杉内俊哉(巨人)の90%(5億円→5000万円)。野手では13年小笠原道大(巨人)の84%(4億3000万円→7000万円)が最大。他球団に移籍したケースでは中村紀洋(オリックス→中日)の98%(2億円→400万円)がある。楽天野手(育成を除く)では07年吉岡雄二の61%(7600万円→3000万円)が最大。

 ◆年俸の減額制限 野球協約第92条(参稼報酬の減額制限)に定められ、年俸1億円を超える場合は減額率40%、1億円以下は25%を超えて減額されることはない。ただし、選手が同意すればこの限りではない。今オフは松井稼の他に日本ハム上沢、広島梵、楽天青山も減額制限を超えて契約更改している。