北條が全試合出場に挑む。阪神のファン感謝デーが甲子園で行われ、来季スローガン「挑む Tigers Change」が発表された19日、北條史也内野手(22)が来季の目標に「全試合出場」を掲げた。今季大きな飛躍を遂げ、金本監督選定の「フレッシュ大賞」に選出された若虎は、来季正遊撃手としての確固たる地位確立を目指す。

 北條の目に一点の曇りもなかった。ファン感謝デー後の球場裏通路。来季のチームスローガン「挑む」が決定した後、背番号2は表情を引き締め、来季に向けて目標を語りだした。

 「1年間試合に出る、全試合出場に自分は挑みたいと思います」

 はっきりと言い切った。北條が目指すのは来季の143試合全出場だ。今季阪神の選手で全試合出場を果たしたのは鳥谷のみ。さらにセ・リーグを見渡してもわずか6人だけだ。だが、今なら-。北條が自らに課した設定の背景には、今年つかんだ大きな自信がある。

 今季は春季キャンプでアピールに成功し、開幕1軍スタート。当初はベンチ要員だったが、6月以降はスタメン出場が増加した。7月27日には絶対的レギュラーの鳥谷から遊撃のポジションを奪取。シーズンを通して122試合で打率2割7分3厘と、世代交代を印象付ける結果を残した。この数字こそが自信の源だ。

 それでも、まだまだ正遊撃手という立場ではない。秋季キャンプ終了後には金本監督が北條に対して「まだ(レギュラーを)つかんだと言えるレベルでもない。つかみかけぐらい」と厳しく評した。来季は鳥谷のショート死守への“逆襲”もあるに違いない。その高きレベルでのポジション争いを制したとき、一流のショート北條が誕生しているに違いない。

 この日、金本監督の選定するフレッシュ大賞に原口とともに選ばれ、賞金1000万円を山分けした。新人王筆頭候補の高山、10勝を挙げた岩貞らを押しのけての獲得。指揮官の大きな期待がうかがえる。

 「今年は1年間1軍にいた。去年は2軍だったので気持ちが違いました。ファンの人の声援とかも僕を呼ぶ声が多かったのを感じました」

 グラウンドでは北條の名前がコールされると大きな歓声が湧き起こった。猛虎の星へ着実に階段を上がっている。さらなる高みへ。来季は全試合出場を果たす。【梶本長之】

 ▼阪神野手が20代で初めてシーズン全試合出場を達成したケースは、05年鳥谷までさかのぼる。同年の鳥谷は2年目の24歳で全146試合に出場。それ以前の主な若手野手の例は、81年岡田が2年目の24歳シーズンで全130試合出場だった。