船出の日に、東北楽天でプレーする重みをかみしめた。楽天ドラフト1位の横浜・藤平尚真投手(18)が22日、仙台市内のホテルで入団会見に臨んだ。早朝に福島県沖でマグニチュード7・4の地震が発生した日。甚大な被害が起こらなかったことに安堵(あんど)し、11年東日本大震災の被災地でプロとなる使命を再確認した。自らの投球でファンを喜ばせ、復興の一助になりたいと誓った。

 「東北」の名を持つチームで投げる意義が明確になった。入団会見を終えた藤平の言葉に熱がこもった。

 藤平 東日本大震災の時、こちらの方は今日よりもっと怖い思いをしたんですよね…。これから自分が野球をする姿を見てもらうことで、少しでも怖さを忘れたり、夢を持ってもらえたらと思いました。

 早朝5時59分ごろ、会見に備え家族と宿泊していた仙台市内のホテルが大きく揺れた。跳び起きてつけたテレビの画面には、マグニチュード7・4の文字。「すごく揺れて、怖かったです。こんなに大きい揺れは東日本大震災の時以来でした」と、中学生だった5年前に思いをはせた。球団は、午前の時点で東北に大きな被害がないことを確認した上で会見の開催を決定。新人14人(育成含む)は背筋を正して壇上に並んだ。

 ドラフト1位の期待を背負い、ファンのために投げる決意が固まった。「プロは簡単に通用しない世界。どこかで挫折があると思いますが、少しでもその期間を少なくして力をつけたいです」と誓った。前夜に行った球団との懇親会。星野副会長が発した「13年の日本一は、震災で被災した地域のために何とか頑張ろうという気持ちからだった」という言葉に心が動いた。東北楽天の藤平として、プロ1年目に全力で飛び込む。

 梨田監督からは「プロに入って満足するのではなく、ここからがスタート。即戦力として、1年目から出てきてくれないと困る」と厳しいエールも受け取った。高校同期の西武今井、ヤクルト寺島らに負けない活躍を目指す。「普段は仲のいい友達ですが、負けたくない。藤平世代と言われるように? そういう気持ちはあります」。来年もゴールデンルーキーが東北を沸かせる。【松本岳志】