俺から「C」マークを奪い返せ! 来季キャプテンに就任する阪神福留孝介外野手(39)が1日、滋賀・おごと温泉の琵琶湖グランドホテルで行われたトークショーに参加。福留は来季キャプテンを鳥谷から「預かる」と表現し、本人とも約束したと明かした。主将として背番号1の復活をバックアップ。その復活が優勝につながると奮起を期待した。

 熱い思いがあふれた。来季のキャプテン就任について沈黙を続けてきた福留が口を開いた。

 福留 やっぱりこのチームが勝っていくには必ず鳥谷の力が必要だから。キャプテンとかいろんなことを背負っていくよりも、まず1度、「鳥谷」を取り戻してほしい。僕の表現からすると「預かる」。トリから1度預かる。その代わりトリにもう1度、鳥谷というのを取り戻してほしい。

 「交代」ではなく「預かり」-。言葉の端々に感じられるのは、鳥谷復活への思いだ。金本監督は前日11月30日に「トリも5年(主将を)やっているから、そろそろ肩の荷を下ろして、自分のことに専念させてあげよう」と説明した。大不振のシーズンを過ごした鳥谷を「C」マークから解放する。その重圧を引き受けて、復活を期す鳥谷をサポート出来るのは、チーム内に福留しかいなかった。

 指揮官からの要請を受けた福留は、すぐさま鳥谷に連絡し、話し合いの場を持った。その場で議論されたのは、チームのあるべき姿、将来像…。そして1つの「約束」が交わされた。

 福留 トリにもハッキリ言ったけど、もう1度キャプテンをつけてほしい。トリから、若い選手にキャプテンが渡ってほしい。それがタイガースが強くなっていくためには必要なこと。1度預かって、(鳥谷には)自分のことに集中してほしい。トリと約束じゃないけど、(2人で)話をして(僕が主将を)受けた。

 俺からキャプテンを奪ってくれ! それが福留のメッセージだ。生え抜きのスター鳥谷から、将来チームの屋台骨を背負う選手にキャプテンが引き継がれる。そうすることで伝統のあるタイガースの魂も継承される。復活を見届け、早ければ1年後にCマークを鳥谷の胸に返すつもりだ。

 福留 (返すのは)来年でもいいし、いつになるか分からないけど、トリは絶対にプライドをもってやっているし、鳥谷が復活するものだと思っている。やっぱりグラウンドに出ている鳥谷であってほしい。トリにはそれが一番似合う。

 チームを愛し、プロフェッショナルとして認め合う2人が交わした約束。キャプテン交代劇にはドラマが隠れていた。【桝井聡】

<福留“アニキ”>

 ▼藤浪を叱る 今季8月30日中日戦(ナゴヤドーム)で先発した藤浪が満塁弾を浴びるなど8安打7失点で1回KO。ベースカバーの遅れもあった藤浪を、福留は三塁側ベンチの奥で叱り飛ばした。鬼の形相でまくし立てる福留に、藤浪は直立不動でうなずくばかり。「投げること以外にもやるべきことをしっかりやれ、と言われました」と藤浪は話し、福留は試合後、記者の問いかけに答えることなく厳しい表情のままだった。

 ▼悪夢の失策をいたわる 6月26日広島戦(マツダスタジアム)は1点リードの9回裏に逆転サヨナラ負け。3-3の同点とされなお2死満塁で、左中間への平凡な飛球を中堅中谷と左翼俊介が激突し、落球。中谷に失策が記録され、阪神の選手が重い足取りでベンチへ向かう。その中で、右翼福留はすぐに中谷に近寄り、肩に手をかけ「誰にでもミスはある。これでプレーが小さくなったらダメ」などと語りかけた。

 ◆今季の鳥谷 3月25日の開幕戦(中日戦)には「6番・遊撃」でフル出場。7月24日広島戦でスタメン落ちし、連続試合フルイニング出場が667で途切れた(プロ野球歴代4位)。8月3日DeNA戦でスタメン復帰も、同12日中日戦で再び遊撃の先発から外れ、以後はシーズン終了までスタメン遊撃はなし。10月1日の最終戦(巨人戦)に「6番・三塁」でフル出場しシーズン終了。打率2割3分6厘、規定打席に到達してのセ26位はプロ入り後最低。守備での適時失策4もプロ最悪。なお1752試合連続出場(プロ野球3位)は継続中。