巨人が日本ハムから国内フリーエージェント(FA)権を行使した陽岱鋼外野手(29)に獲得オファーを出したことを4日、表明した。今季不在だった正中堅手の補強に動くことを決断。オリックス、楽天との争奪戦だが、陽は在京志向とみられ、移籍先の最有力候補だ。合意に達している山口俊、森福に陽が加われば史上初のFA3選手補強となる。この日は元楽天のケーシー・マギー内野手(34)の獲得、小山雄輝投手(28)と楽天柿沢貴裕内野手(22)のトレードも発表。球団史に残る大補強で復権へ突き進む。

 センターラインに埋める最後のピースは陽だった。都内でのOB総会前に堤GMがマギー、トレードなど、立て続けに人事を公表。そして最後に3人目のFA選手の名前を挙げた。「陽岱鋼選手に正式オファーを出した。今年は固定できなかったセンターにはまるし、打線の軸になる」。山口俊、森福が加わってもFA補強の手を緩めない。来季3年ぶりのリーグ優勝が至上命令の盟主が総力を挙げて獲得態勢に入った。

 すでにオリックス、楽天が獲得に動いているが、巨人が大本命だ。陽は教育環境や来年1月にも出産予定の第2子も含めた家族のための生活環境を重視し、在京志向とみられている。東京は母国台湾とのアクセスもよく、大きなプラスポイントだ。球界関係者の話を総合すると、巨人とは相思相愛と言われている。堤GMは「何とか年内にいい報告ができないかなと。大詰めの交渉をやっています」とゴールへ近づいていることを示唆した。

 陽岱鋼は巨人では手薄な貴重な右打ちの外野手。1、3番の上位を任せられる打撃力がある。今季も含めて4度、ゴールデングラブ賞を獲得するなど守備力も申し分ない。近年は故障も多かったが、13年には盗塁王の獲得歴があり、走攻守3拍子がそろっている。

 陽どりと並行し、球団史に残る補強を突き進んでいる。13年に楽天を日本一に導いたマギーは1年契約、年俸1億8700万円(推定)、背番号33でサイン。高橋監督は「4番としてやってくれれば。勝負強い。でもはなから使うと決めてはいない。いい競争をしてほしい」と話した。3割、25発の村田、来季は一塁手専念の阿部と重なる存在だが、長丁場で余力が必要なのは今季の教訓でもある。さらに小山と楽天柿沢をトレード。柿沢の将来性を買って、近未来も見据えた。

 93年のFA制導入後、1シーズンでFA権を行使した3選手を獲得したのは初。先月上旬には日本ハムから先発左腕の吉川光、外野手のレギュラー候補となる石川も獲得。高橋監督は大補強に「どんな形になっても勝たなくちゃいけない。補強をしてもらったので、何とか結果に結びつけたい」と思いを新たにした。名門復権へ、球団史に残る改革は続く。【広重竜太郎】

 ◆陽岱鋼(よう・だいかん)1987年1月17日生まれ。台湾出身。福岡第一から05年高校生ドラフト1巡目で日本ハム入団。07年4月20日ソフトバンク戦で1軍デビュー。12年から4度のゴールデングラブ賞。13年には最多盗塁を獲得。183センチ、89キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸は1億6000万円。

 ◆FA選手獲得メモ 08年からFA選手のチーム年俸順位によるランク分けを実施。それまでFA獲得人数は1球団2人以内だったが、Cランク(年俸11位以下)の選手は獲得人数に含まれなくなり、従来通りのAランク(年俸1~3位)とBランク(同4~10位)の選手2人に加え、Cランクの選手を獲得できるようになった。昨年まで2人獲得は巨人7度、ソフトバンク3度、阪神1度、DeNA1度、ヤクルト1度の合計13度あったが、3人以上獲得したケースはまだない。

 ◆巨人の大量新加入メモ 最近では11年オフがある。FAで杉内(ソフトバンク)と村田(横浜)の2人、大村の人的補償で高口(ロッテ)が加入。他に自由契約となった石井義(西武)中谷(楽天)ホールトン(ソフトバンク)を獲得し、育成選手で契約した小林(中日)を含めて7人が加わった。FAで小笠原(日本ハム)と門倉(横浜)を獲得した06年オフも6人が加入。2人に加え、トレードで谷(オリックス)大道(ソフトバンク)小田嶋(横浜)の3人、小久保の人的補償で吉武(ソフトバンク)を獲得した。07年は5年ぶり、12年は3年ぶりのリーグ優勝を果たした。