ソフトバンク工藤公康監督(53)が12日、二十数年ぶりに母校愛工大名電(当時は名古屋電気)のグラウンドを訪れた。前回は西武時代、渡辺久信氏(現西武SD)と訪れて以来。昨年5月に新しくなったグラウンドには初めて訪れた。両翼が当時の91メートルから100メートルに広がっていた。「高校生でこの球場はすごいね」と驚いた。

 同校の母体、名古屋電気学園が工藤監督のこれまでの功績を評価。初代理事長の名前をつけた後藤■二(こうじ)賞として表彰。この日が授賞式で、当初予定にはなかったが、グラウンドへ足を運んだ。

 「ここでの3年間は原点。非常に厳しかったけれど。毎日、学校から寮まで走った。そこで下半身をつくったことで、高校の時に肩、肘を壊したことはなかった」。12、13キロの道のりをこの日は車から眺めた。川沿いの景色は変わらないままだった。野球部寮の中も見学。自分の甲子園出場時の写真を見つけ、食堂や選手たちの部屋を見学し、当時を思い出していた。肌寒い風を受けると「昔は風よけのためにと、みんなで土を盛って土手をつくってたよ」と笑った。

 母校では野球部員ら約100人の現役生の前で熱弁をふるった。プロ野球の監督という仕事について聞かれ「勝つために最善を尽くさないといけないけど、育てなきゃいけない。大変だけど、これだけ楽しくておもしろい仕事はない」と正直な気持ちを明かした。

 「今年はチーム一丸で日本一を奪回する」。36年前の汗と涙が染みこんだ場所で、気持ちを新たにした。【石橋隆雄】

※■は金ヘンに甲