通常、金本監督は序盤の送りバントを選択肢に入れない。「ハナからバントは好きではない」と公言する。2番打者に攻撃的な姿勢を求め、チャンス拡大を図る。就任以来掲げるポリシーを曲げても、1点を取りに行った。言うまでもなく、相手が菅野だからだ。そして昨年と違うのは、得点圏打率リーグトップの糸井の存在だ。3番打者は思った。「1、2番が先制のチャンスを作ってくれたので、何とかランナーをかえすんだと思って、打ちにいった」。執念の采配に選手が応え、3回4得点につながった。

 この日、打点を挙げたのは、糸井、鳥谷、福留のベテラントリオだ。「相手が菅野になると、打てるバッターも限られてくる。あの3人がチームを勝たせる。成績でも内容でも発言でも勝たせていかないと、このチームは勝っていけない」。金本監督は育成に力を入れるが、それは中堅、ベテランの働きがあってこそと考えている。だからオフには自ら出馬して、糸井を獲得した。6連勝で20勝に到達。リーグ一番乗りだ。そして貯金「10」に王手をかけた。勢いではなく、首位の強さを感じさせる勝利だった。【田口真一郎】