【05年2月5日付・日刊スポーツ】

 【ロサンゼルス3日(日本時間4日)=四竈衛】ポスティング(入札)制度でメジャー行きを目指していた中村紀洋内野手(31)が、ドジャースと正式契約を交わし、本拠地ドジャースタジアム内で入団会見を行った。マイナー契約、キャンプ招待選手の条件ながらも、米国に「勝負にきた」とキッパリ。「開幕メジャー」さらに「三塁」の定位置獲得に意欲を見せた。背番号もプロ入り当時と同じ「66」に決まるなど、文字通り一からのスタートとなる。

 マイナー契約ながら、マッコート・オーナーはじめ約150人が集まった記者会見。真新しいユニホームに袖を通した中村は素直な胸の内を明かした。「すごくハッピーというか、幸せな気持ちですが、これからが勝負だと思ってます」。

 メジャー昇格の保証はないキャンプ招待選手。推定年俸はメジャー昇格すればはね上がるだろうが、現状では推定50万ドル(約5200万円)程度。FA宣言した02年オフ、メッツから提示された額(推定年俸約6億円)とは雲泥の差だ。状況、立場の違いは明白。だが一方で、より強くなったものもある。「こっち(米国)に何をしに来たか。勝負にきたんです。お金は関係ないです」と話す、野球人としての「欲」だ。

 メッツとの契約は成立目前で破たんし近鉄に残留。その後の2年間は右ヒザ手術、近鉄の合併問題など、野球に専念できる状況にはほど遠かった。それが中村を原点に回帰させた。「日本での実績は近鉄がなくなった時点で捨ててます。新たな気持ちでドジャーブルーに身を包んでやっていきたいですね」。

 背番号「66」を選んだのも強い意志表示。近鉄入団時の番号は、実績のない米国での第1歩を踏み出す気持ちと重なる。「近鉄があれば(今回)ポスティングで来ることは考えなかった。OBの方々にもいろいろ教えていただいたし、近鉄の魂は抜け切らない。でも近鉄がなくなったことで、自分の野球人生に悔いを残したくなかったんです」。

 置かれる立場は、決して楽ではない。だが5年連続25本塁打のレギュラー最右翼バレンティンにしても、打撃にムラが多く守備は不安定。中村の地力からすれば、奪い取る可能性は十分だ。既にメジャー独特の動く球に対応すべく、新タイプの太いバットを使用。材質もホワイトアッシュに変えるなど準備は着々と進めている。

 「フルスイングは野球をやる限り貫き通したい。(ヒザが完治し)やっと思い切り振れるようになったし、自由自在にバットが振れるところをアピールしたいです」。環境やバットが変わっても、スタイルや生き方は変えない。晴れやかな入団発表は、髪の色も金髪を黒く染め直した中村の決意表明でもあった。