<中日5-3広島>◇29日◇ナゴヤドーム

 負けてヘコんでばかりはいられない。広島は中日との開幕第2戦を3-5で落とした。先発ルイスの乱調が響いたが、5番・前田智の意地の2ランで一時は1点差まで詰めた。「走る野球」を掲げる今季、スタメン落ちの可能性もあったベテランだが、18年間磨き上げてきたバット1本でレギュラーの座を堅持。機動力重視のスタンスは変わらないが、ブラウン監督のうれしい悩みが続きそうだ。

 バットが体に巻き付くような独特のスイング軌道。打球は一瞬のうちに青に染まった右翼スタンドに突き刺さった。一振りで試合展開をガラリと変えてしまうところはバットマンの意地か。一時の0-4の劣勢から1点差にまで詰める2ラン。5番・前田智の存在感は際立っていた。

 「甘い高めの直球だね。最初からファウルでもいいくらいの気持ちで打っていった。エラーで流れがこっちに来そうな感じはあったからね」。

 広報を通じて試合中にコメントを出した。一瞬の試合の流れを読んでいた。簡単に2死をとられたあと、一塁ウッズの失策で栗原が生きた。その直後の初球。140キロの内角の難しい球を詰まることなく技術でスタンドまで運んだ。

 大きな意味を持つ一発かもしれない。「前田智はやはり不可欠-」。オープン戦から続く名球会男のすさまじい打棒が首脳陣を迷わせている。ブラウン監督は「今年は野球を変えないといけない」と宣言。1番赤松、2番天谷の2人を軸にした機動力野球を打ち出した。その影響を受け、前田智はスタメン落ちの可能性が高くなっていた。

 しかし、ここ一番での勝負強さはやはりチームでもトップクラスだ。28日の開幕戦でも9回の勝ち越しを導いたのは先頭前田智の安打。この日も5回の先頭で右前打を放ち、チームの初得点につなげた。そして次の打席で相手のミスに乗じて2ランをぶち込んだ。

 この試合、赤ヘル打線は極端なタイムリー欠乏症に陥った。5回は無死満塁で結局1点どまり。6回も前田智の本塁打のあと2死一、二塁としながらも追加点を取れなかった。最もひどかったのは7回。無死二、三塁で2番梵、アレックス、栗原と倒れた。

 ブラウン監督もさすがにキレ気味だった。「あそこが勝負だった。鈴木という投手を何とか倒そうという気構えが必要だった。梵はワンバウンドの球を振り、アレックスは初球の難しい球。栗原は(荒木の)ファインプレーで残念だったけど」。栗原は一塁にヘッドスライディングを試みた。「何とかという気持ちだった…」。主砲のがむしゃらな思いも届かなかった。

 そんな拙攻続きの中で光ったのが5番にいた前田智だった。指揮官は「今年は本塁打を待つような攻撃はしない。こちらから仕掛ける野球をする」と繰り返しているが、鮮やかな放物線を見て、やはり適所に「打力」が必要と痛感させられたかもしれない。

 前田智は試合後、無言で帰路を急いだ。勝ちに貢献できないもどかしさが、全身からにじみ出ていた。【柏原誠】