<阪神4-3中日>◇2日◇甲子園

 逆風を切り裂き、打球がライトの頭上を越えると、思わず右手を突き上げた。ベンチを飛び出してくるナインには、跳びはねて応えて見せた。阪神葛城がプロ9年目で初めてのサヨナラ打。お立ち台で大歓声を受けると、両手を天に突き出し、叫び、こみ上げる思いを表した。

 「最高です。でも、ちょっと頭が整理できない」。同点で迎えた9回、2死一塁。葛城がフルカウントから右翼越え二塁打を放った。前打者の「新・代打の神様」桧山進次郎はライトへの大きな当たりを浜風に押し戻され、フェンス際でキャッチされていた。だが、もう1人の左の代打の切り札葛城が劇的に試合を決めた。

 「絶対に打とうという気持ちだった。桧山さんの打球が捕られていたけど、僕の(打球)はちょっと低かった。ライナーで右中間か左中間を抜ければいいと思っていた。フルカウントだったので(走者も)走ってくれていた。うまいこと体を回転できたし、抜けてよかった」。

 林の復帰後は、代打としての役割が多くなっていた。それでも「スタメンでも代打でも、試合に出るのは一緒。自然体でいこうと思っているんです」と、試合に臨む意欲は変わらない。今季は代打でも4割以上の打率を誇る。代打の成功の秘けつを聞かれると「僕も知りたいくらいです」と、思わずジョークも飛び出した。岡田監督も「伏兵の活躍?

 伏兵ちゃうやろ。元レギュラーやろ」と顔をほころばせた。葛城は「阪神に来てからは優勝を味わっていないので、優勝を味わいたい」という。2位中日とのゲーム差は今季最大タイとなる8・5に再び広がった。【福岡吉央】