<阪神4-6巨人>◇27日◇甲子園

 新井、救世主になってくれ!

 阪神が巨人との直接対決に4-6で敗れ、再び同率首位に並ばれた。腰の疲労骨折で離脱していた新井貴浩内野手(31)が電撃復帰。6回1死満塁で代打で登場し、いきなり右前適時打を放ち、その後は守りにもついた。巨人には屈辱の6連敗で6年ぶりの対戦成績負け越しも決まったが、まだ首位。阪神の試合がない28日に巨人が中日に負ければ、阪神にマジック「8」が点灯する。最後のしびれる戦いで、新井が頼もしい存在となる。

 欠けていた大きな柱が突然、戻ってきた。腰の疲労骨折で戦列を離れていた新井が電撃復帰。そしていきなりチャンスで代打タイムリーは、超人級の離れ業だった。巨人に屈辱の6連敗で再び同率首位。しかし新井の復帰、活躍は今後のし烈な戦いの道に明るい希望の光をもたらした。

 新井

 腰?

 大丈夫です。こんなに早く復帰できるなんて思わなかった。お世話になったトレーナーらスタッフの方に感謝したいです。

 ただでさえ「TG決戦」で異様な盛り上がりを見せていた甲子園が、新井の登場でさらにヒートアップした。与えられた復帰の舞台はリードされた6回1死満塁のチャンス。長いブランクを気にする余裕などなかった。巨人の越智と対し、カウント2-2から2球ファウルで粘る。7球目。高めの150キロ直球に食らいつく。打球は一、二塁間を破るこん身のタイムリー。速球を打つ練習まではたどり着いていなかったが、体が覚えていた。走りながら右拳を握りしめていた。

 新井

 とにかく何とかランナーを返そうと思ってすぐに打席に向かった。歓声は聞こえていました。すごくうれしかったですね。

 56日ぶりの1軍復帰はまさに電撃的だった。北京五輪から帰国後の8月25日に「第5腰椎(ようつい)疲労骨折」と診断され、長いリハビリが始まった。少しずつ状態も練習も上げてきたが、復帰時期に関しては明確にされなかった。この日も昼すぎまで鳴尾浜で汗を流し、1軍に合流するそぶりすら見せていなかった。そして午後5時過ぎに突然ベンチに登場。岡田監督は言った。「巨人はあわててる?

 だから5時まで呼ばんかったんやないか。今日から戻ってこれそうって言わなあかんことか?」。新井を最大の起爆剤と考えるからこそ隠した。試合には敗れたが、その効果は代打適時打で実証された。

 この日の鳴尾浜。新井は復帰こそ口にしなかったが“思い”は明かしていた。「(復帰の)時期はまだわからないけど、自分自身としては、どう言われても対応できる準備はしておきたい。そういうことを言ってる場合じゃないですしね」。離脱中も、試合のある日は欠かさずテレビの前でチームの勝利を願った。少しでも早く復帰したい思いから、朝8時にクラブハウスに足を運んだこともあった。新井もこの日を待ち望んでいた。

 守りにもつき、今後の試合出場へ大きな手応えをつかんだ。そして巨人との覇権をかけた戦いに思いを強くした。「今後はやってみないと分からない。でも、やるしかないということ」。残り9試合。帰ってきた新井が「切り札」となる。【福岡吉央】