<中日5-1ソフトバンク>◇12日◇ナゴヤドーム

 オレ竜が交流戦開幕戦を白星で発進した。3回、森野将彦内野手(31)が左中間に先制のタイムリー二塁打を放つと、投手陣の奮闘もあってこれが決勝点となった。試合後には選手が整列してファンに一礼。森野が考案した「目安箱」に寄せられた意見から採用された勝ち試合限定のプランだった。新選手会長がファンサービス改革の第1歩を、自らの決勝打で実現させた。

 勝利への道を切り開いた。0-0で迎えた3回2死二塁、森野がソフトバンク先発ホールトンの直球に反応した。外角高めの球を逆らわずに左中間へ。「何とか僕が返そうと思っていた」。試合を動かした先制タイムリーが決勝打となった。1回に右前打、8回に左前打。今季11度目の猛打賞で打率は4割1分6厘まで上昇。セ・リーグ首位打者は交流戦でも止まらない。

 勝ちたい理由があった。試合終了直後、グラウンドにナインが整列し、スタンドのファンに一礼した。09年12月、新選手会長となった森野がファンサービス改革のために発案した「目安箱」。ファンが寄せてくれた意見の中からプランを採用した。球団はこの日からの実施を発表。勝利試合限定だけに、負ければいきなり足踏み、実現が見送られるところだった。「目安箱」が設置された4月から球団側と協議を重ね、この日の試合前に選手全員に協力を呼びかけてもいた。年々、観客動員が減るナゴヤドームにファンを呼び戻すための改革を決意してから5カ月。ようやく、動きだした第1歩を自ら決勝打で飾った。

 森野の原風景は小学生の時、父親と通った横浜スタジアムだ。小学校から帰ると、すぐ自宅を飛び出した。開門まで待ち切れなかった。サインやグッズなどなくてもいい。ただスタジアムで野球が見られれば幸せだった。「理想は、今の子供たちにも球場に行きたい、あの選手のプレーを見たいと思ってもらうこと。目安箱がそんな意見でいっぱいになること」。そのために、まずは球場に足を運んでもらうのだ。

 この日は一部選手がベンチに戻ってしまうなど、意思統一がはかれていなかった。ロッカーに戻った森野はすぐに“緊急ミーティング”を招集し、勝利の儀式の流れを再確認した。「まずはやれたことが第1歩。明日も勝って、次はきちんとあいさつできるようにします」。現場主導では限界がある。球団がどれだけ主導権を握れるか。周囲がどれだけ森野をバックアップできるか。課題は山積だが、小さな1歩を踏み出したことに価値がある。最初の1歩がなければ、改革など生まれない。【鈴木忠平】

 [2010年5月13日12時27分

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