<日本シリーズ:ロッテ7-1中日>◇第3戦◇2日◇千葉マリン

 日本シリーズはサブマリンにお任せ。ロッテ渡辺俊介投手(34)が緩急を生かした投球で、中日打線相手に5安打1失点で完投した。いつもより弱い本拠地千葉マリンの風を計算に入れ、わずか97球で9回を投げきった。日本シリーズでは05年に阪神打線を無四球完封し、シリーズ史上初の2試合連続無四球完投となった。第2戦では大量12失点で中日に流れが傾きかけたが、ベテランの頭脳的な投球がチームに大きな1勝をもたらした。

 右翼席からの俊介コールに、渡辺俊はグラブをはめた左手を上げてこたえると、帽子を脱いで頭を下げた。温かいホームの声援に後押しされていた。「CSのヤフードームでは、いい投球をしても、オレ何か悪いことをしたかなあって感じでしたが、今日はいいことをしたんだって思えました」と笑わせた。

 シンカー中心の力みのない投球がさえ、わずか97球で無四球完投勝利。05年の阪神とのシリーズ第2戦で完封したのに続く、2試合連続無四球完投は史上初の快挙だ。さらに100球未満での完投勝利は64年スタンカ(南海)以来6人目、10度目。まさに記録ずくめの投球に、西村監督も「今日は落ち着いてましたね。ここに来て状態がいいんです」と目を細めた。

 準備は念入りだった。宮崎でのミニキャンプから、名古屋へ飛行機で飛んだ28日、手元にあった2冊の本のうち、大好きな伊坂幸太郎らが書いている短編集を手にとった。もう1冊は長編小説。「大事な試合が近づいてくると、長編じゃなくて短編にするようにしてるんです。ベッドとかで寝そべって同じ体勢で夢中で読んでると、筋肉が固まってしまう。短編なら区切れますからね」。細かいことまで気を配ったのは、結果を出すためだった。

 3回に日本シリーズで初めて失った1点については気にとめていない。左直で三塁走者の谷繁は飛び出し、帰塁してからタッチアップしたが、清田の送球が乱れセーフになった。「清田が、ちゃんと投げてたらアウトでした。すみませんって言ってくれて、今、絶好調だし、絶対、打って返してくれると思ってました」。一緒にお立ち台に上がったルーキーにも感謝しながら投げきった。

 第2戦でマーフィーが炎上したことが、チームには大きな誤算になっていた。渡辺俊まで崩れたら、第7戦までもつれた際の先発がいなくなるところだった。右ひじ痛から復活登板の唐川と、中日との対戦経験のないペンは未知数。星勘定以上に、がけっぷちにいたチームを救ったのは、頼れるサブマリンだった。【竹内智信】

 [2010年11月3日8時59分

 紙面から]ソーシャルブックマーク