楽天1軍は12日、兵庫・芦屋市のチーム宿舎から電車を乗り継ぎ、横浜市内のホテルへ無事に移動した。マグニチュード(M)8・8の「東日本大震災」が、本拠地である仙台を直撃。時間を追うごとに拡大する被害に、星野仙一監督(64)はじめ選手の表情は一様に硬かった。クリネックススタジアム宮城の正確な被害状況は不明だが、一部損壊がある。安全な移動手段が確保されるまで現地入りはせず、関東に滞在し練習する。13日ヤクルト戦(神宮)、15日横浜戦(横浜)は中止が決まった。

 星野監督はギュッとくちびるを結び、泣きだしそうだった。チームはこの日、芦屋市の宿舎から在来線、東海道新幹線と乗り継ぎ、昼すぎに横浜市内の宿舎に到着した。仙台の惨状をニュースで確認し、深いため息をつきながら、芦屋駅のホームで言葉を絞り出した。

 星野監督

 これはちょっと…。予想以上というか、相当だな。これからもっと、被害が出てくるだろう。すべてのスケジュールを白紙にしなくてはならない。すべて仮定の話になるが、状況が許すのであれば、戻りたい選手は仙台に行かせてやりたい。家族も心配だろう。

 全員が前夜遅くまで安否確認に追われた。「津波が…。どういうことだ…。球場の近くまで来ていたようだな」。スタッフが無事だから、と安堵(あんど)することなどできない。「簡単なことは言えない。初めての経験だ。分からない。本当に困った」と被災者をおもんばかった。

 地震発生から一夜明け、本拠地Kスタ宮城の被害も徐々に明らかになってきた。残留組は午前10時に集合予定だったが、避難所で夜を明かした選手などがおり、全員が自宅、寮待機となった。グラウンドレベルには線を引いたようなヒビ、裂け目が入っている。立ち入り禁止の球場内部からは、配管から水漏れするような音が聞こえ、液状化現象の危険性もある。球場とクラブハウスを結ぶ通路は損壊が激しい。窓ガラスは粉々に割れている。球団事務所内に対策本部を設け対応に当たっている。

 球場管理の担当者が一通りの確認を行ったが、安全な試合実施の可否については建築の専門家に意見を仰ぐ必要がある。加えて仙台市内のライフライン復旧に見通しが立たず、周辺の被害も甚大である以上、球場修繕の優先順位は現時点で低い。余震の危険性も高く、25日の開幕戦実施は極めて厳しい状況、と言わざるを得ない。

 球団は日本野球機構(NPB)と慎重に意見を重ね、今後のスケジュールを決めていく。米田球団代表は「安否確認を終え、今は球場をはじめとした仙台の現状を把握している段階。正確な情報が集まった時点で検討したい」と述べた。宿舎到着後は全スタッフを集め「家族の負担を除いてあげる事を最優先に考え、行動して下さい」と説明。仙台への安全な交通手段が確保されるまで、在京球団の施設を借りながら調整を続ける。