<日本ハム0-5ソフトバンク>◇27日◇札幌ドーム

 おきて破りのカブ弾で再奪首だ!

 ソフトバンクの大砲アレックス・カブレラ内野手(39)が復調アーチを放ち、日本ハムから一夜で首位の座を奪い返した。昨季7試合対戦し、1度も土をつけられなかったチームの天敵左腕を攻略。契約で禁止されていたタトゥーお披露目の打席で、千金弾をぶちかました。

 ホークスにとって天敵の2文字を、禁を解いたカブレラが吹き飛ばした。4回だった。第2打席。長袖アンダーシャツをやめ、両腕の肘から手首の間を試合で初めてみせた。武田勝の外角チェンジアップをとらえた。打球はバックスクリーンで弾んだ。先制の2号ソロ。「チェンジアップとか動く球を多くもっている投手。打席に入る前に(狙いを)考えていた」。カウント別に投手の球種を頭にたたき込んでいる大砲がしてやったりのコメントだ。

 幾重にも価値ある1発だ。昨季、ソフトバンクは武田勝と7試合対戦し、5勝を献上。1度も黒星をつけられなかった。今回も日本ハムはローテを崩してまでぶつけてきた。昨年までのホークスが苦手としたサウスポーの持ち球を、新戦力が粉砕してみせた。

 おきてを破った。前日まで打率1割8分8厘。極度の不振だった。前夜のダルビッシュとの対戦では、バットを立てる構えだったが、この日は本来の担ぐ格好に戻していた。試合前には打撃コーチと西武、オリックス時代の打撃フォームをチェックしていた。そして、自身にとってはおまじないも復活させた。

 両肘下のタトゥー。入団契約の際、球団から見えないようにするようにと、禁止条項が盛り込まれた。これまで長袖アンダーシャツだけでなく、リストバンドで包むときもあった。「ノーコメントだ。その件は言えない」と、タトゥー関連の質問には答えなかったが、打席ではお構いなしとばかりに解禁した直後、豪快アーチ。8試合ぶりのマルチ安打もマークした。完全復調だ。同じように不調だった多村の今季1号2ランも誘発。ベンチで迎え入れ、ガッチリと握手。「お互い昨日までとは別人だな」。豪快に笑った。

 指揮官の期待にも応えた。バットが空を切り続けても、秋山監督は4番を任せた。「調子どうこうはあるけれど、投手で言うと抑えが決まれば前の投手が決まるように、打線も軸がしっかりしていないといけない。相手に与える怖さもある」。じっと復調を待った秋山監督も、最高の笑顔で移動バスに乗り込んだ。

 天敵だった左腕を今季初顔合わせで5回KO。一夜で首位に返り咲いた。ひと回りの対決を終えた開幕5カードで負け越しなし。貯金4。「これからまた貯金を1つずつ増やしていければいいね」と秋山監督。その言葉を現実にする頼もしいナインがいる。【松井周治】