<広島3-5巨人>◇7日◇マツダスタジアム

 巨人阿部慎之助捕手(32)が球団史上5人目となる11年連続2ケタ本塁打でV打点を挙げた。2点リードを追いつかれた直後の6回表、広島青木から右翼席に10号ソロを打ち込んだ。先発西村健太朗投手(26)は7回を5安打2失点に抑え、4勝目をマーク。原辰徳監督(53)は8回にスクイズでダメ押し点を奪う執念の采配をみせた。チームは今季最多の5連勝。借金完済まであと2勝、首位ヤクルトとのゲーム差も6・5に縮めた。

 巨人阿部の放った打球が、右翼スタンドへ吸い込まれた。6回無死。左腕青木のスライダーを完璧にとらえた。カウントは3ボール1ストライク。狙い球を確実にとらえようと、力強くボールをたたいたような打球だった。5回に同点とされた直後に、先発の西村を援護。「完璧。5回のピンチ(無死満塁)を健太朗(西村)が同点でしのいでくれたので、何とかしたかった」と、一塁ベースを回って少しだけ拳を握りしめ「自然と出ましたね」と、ガッツポーズで喜んだ。

 決意の丸刈りだった。前日6日の試合前練習後、選手控室でバリカンで頭を刈った。理由を問われ「気合を入れたんだよ!!」と、勢いよく叫んだ。「何年か前まではよくやってたよ。自分の中でめんどくさいというのもあるし、気を引き締める意味もあったから」。チームの主将が自らに闘魂を注入した。

 攻守の要として悔しさもあった。6日は実松がスタメン出場。原監督は「少し慎之助も、コンディション的にね」と、正捕手をベンチスタートにした。打率は2割4分台と低迷する。それでも打撃練習ではフルスイング、コンパクトなスイング、一握り短くバットを持って左方向を意識した打撃など、さまざまな方法で取り組んでいる。「打てないから。そうするしかないでしょ」。もどかしさと闘いながら、日々、試行錯誤を重ねている。そして積み重ねた記録。11年連続の2ケタ本塁打は、巨人では08年に達成した高橋由に並ぶ4位タイだ。その上には王、長嶋、原と大打者たちが名を連ねる。「もっともっと上を目指してきたいので」と、頼もしく話した。

 主将のメモリアルアーチでチームは今季初の5連勝を飾った。投手が踏ん張れば、打線がカバーする。歯車が完全にかみ合い始めた。7月15日には首位ヤクルトと最大12ゲーム差をつけられたが、ジワジワと追撃し、この日で6・5ゲーム差とした。前日はエース東野の復活勝利。そしてこの日は主将がスタメン復帰でチームを勢いづける1発。大逆転劇のシナリオはそろってきた。【斎藤庸裕】