<DeNA3-1阪神>◇20日◇横浜

 新生球団DeNAが7戦目にしてようやく本拠地初勝利を挙げた。阪神戦の4回、中村紀洋内野手(38)の2号2ランで先制。8回にも森本の適時打で貴重な1点を加え、6投手による継投で逃げ切った。6日は広島前田健にノーヒットノーランを食らい、13日は巨人沢村に1安打完封負け。「ヨコハマ魔の金曜日」も振り払った中畑清監督(58)は、「長かったね。きつかったね」としみじみ話した。

 やっと訪れた、心地よい疲れだった。横浜スタジアムでは今季初のお立ち台に上がるジオと中村をベンチから眺めながら、中畑監督は「疲れるなあ」。高木ヘッドコーチにもたれ掛かりながら、7戦目で、ようやくつかんだ本拠地初勝利の喜びをかみしめた。

 再三の危機を乗り切ってつかんだ1勝だった。2回と4回に迎えた1死満塁の大ピンチを、相手のミスにも助けられ、いずれも無失点で切り抜けた。「2度の満塁をしのいだのがターニングポイント。あそこで失点しない粘りが、その後の攻撃につながったね」。先制されていれば、重い空気が漂いかねないところを必死に乗り切った。

 何としても勝ちたかったこの試合。中畑監督は大きな決断を下して臨んだ。掲げる機動力野球の担い手として、期待を込めて使ってきた梶谷を「頭を冷やして原点に戻ってもらうということ」と登録抹消。渡辺直、一輝を初スタメンに起用した。“育てながら勝つ”ことをいったん脇に置き、勝利を優先。「今できる最高の形を提供しないと、ファンは納得しない。このメンバーが今のうちの主役」。

 この強い決意にベテランが最高の形で応えてくれた。得点圏打率が脅威の8割で、「1、2番の出塁から早い段階で点に結び付けるには、この打順」(中畑監督)と3番に起用された中村が、4回無死から左翼席最上段にたたき込む、豪快な先制2ラン。「体はいっぱいいっぱいですが、何とか勝ちたいという思いだけ。スタジアム初勝利の日に打ててよかった。チーム、ファンのために、勝ちたい一心でやっています」。値千金の本拠地第1号を、充実の表情で振り返った。

 8回には、その中村の中前打から好機をつくり、森本の適時打で貴重な追加点。9回に再び訪れた満塁の危機も、守護神山口が何とかしのぎきった。中畑監督は「あの1点がみんな欲しくてしょうがなかった。ピンチもよく守って、これが全員野球」と、チーム全体をたたえた。試合後の会見途中では、「声が出ていないけど、あんまりしゃべっちゃうと、喜びを発散しちゃう。喜びをとっておきたいの」。やっと地元で届けられた1勝。ファンは1つでも多くの白星を待っている。【佐竹実】

 ▼DeNAが本拠地で初勝利を挙げた。これでDeNAは今季5勝目となったが、勝利打点は1日阪神戦=なし(敵失)11日ヤクルト戦=中村、12日ヤクルト戦=黒羽根、15日巨人戦=中村、20日阪神戦=中村と、チーム5勝のうち中村が勝利打点を3度記録している。先制2ランは左腕の能見から。今季、右投手に対しては打率2割3分8厘の中村だが、対左投手は15打数7安打で打率4割6分7厘をマークしている。