<広島2-3DeNA>◇21日◇広島

 DeNA筒香嘉智内野手(20)が笑った。試合中はもちろん、練習でもめったに笑顔を見せない若きサムライが、ヒーローインタビューで思わず相好を崩した。「今年一番のバッティングでした。相手が良い投手なので振れると思った球は振ろうと思った」と、手に残る感触を思い起こした。

 同点で迎えた8回だった。今季4戦4敗で、4試合でわずか1得点しか挙げられなかった広島のエース前田健から7号決勝ソロを放った。1死走者なし。カウント3ボール2ストライクと追い込まれてから、決め球のスライダーが甘く入ったところをひと振りで仕留めた。

 いつも以上にテンション上昇の中畑監督は「気持ちいい~!

 マエケンに勝ったよ!

 筒香は追い込まれてもタイミング、スイングすべて合っていたな。3番の風格が出てきたよ」と、満面の笑みを広げた。

 中畑監督の課した荒療治が功を奏した。7月27日時点で打率1割9分4厘と低迷していたため、悩んだ末に2軍降格を告げた。「徹底的に振り込んで調子を上げられないようなら、不調の根本的原因である右手首の手術もあり得る」とまで迫った。

 追い込まれた筒香は「手術はしない。右手首は問題ないので、最短で1軍に上がります」と宣言。再調整を経て8月11日に1軍昇格してからは、打率3割5分5厘、6打点と有言実行の働きを見せている。

 若き大砲に火が付けば、チームの勢いも増してくる。これで5位阪神に3・5ゲームと再接近した。「まずは阪神を追い越すことが目標です。追い越したい」と、筒香は頼もしく最下位脱出宣言した。【鳥谷越直子】