<ヤクルト2-5巨人>◇8日◇ハードオフ新潟

 「野球小僧」のおとこ気で優勝目前の巨人にカツが入った。不調に苦しみ、前夜の試合途中でリフレッシュ帰宅を促された村田修一内野手(31)が、髪をさっぱり刈り込んで登場した。村田の決意を意気に感じた打線は1回から爆発し、連日の2ケタ15安打でヤクルトを一蹴。村田も4打席目に安打を放った。これで3位以内が確定し、両リーグ一番乗りで6年連続のクライマックスシリーズ(CS)進出が決まった。2位の中日が敗れたため、優勝マジックは2つ減って「13」。いよいよカウントダウンが始まる。

 「えっ!?

 あれ、シュ、修さんじゃないですか!!」。東京駅の新幹線ホームで長野が叫んだ。阿部、古城、大田らが一斉に振り向いた。視線の先には頭をすっきり刈り込んだ村田が、照れくさそうに仁王立ちしていた。阿部から頭をなで回され大爆笑を誘った。原監督も「いいね!」と、朝から大喜びで迎えた。

 眠れる大砲の潔い決断だった。甲子園での阪神3連戦は13打数2安打。前夜も2打席凡退で2回の守備から交代し原監督から試合途中に帰宅を促された。「自分が一番(調子が)悪いから、自分が明るくすれば、チームも明るくなると思って」と、Vロードを突き進むチームの中で自身の居場所を探した答えが“丸刈り”だった。

 反省、みそぎ…。そんなネガティブな発想ではない。「昨日、酒を飲みながら思いついた。『丸刈りにしたら、みんな、どう思うかな』って」。子どもを寝かしつけ、時計の針がてっぺんを指したころだった。「よし、やるぞ」と、おもむろにバリカンを手に取り、風呂場に向かった。鏡を見ながら「普通のだったら泰示(大田)と同じだから」と、自らの手で刈り込んだ。襟足は「嫁にやってもらった」と、産毛まできれいにそろえた。気合が入った。精悍(せいかん)さが増し、相手を威圧する貫禄も戻った。

 信念がある。「小さいときから『下を向くな』って、言われてきた。『次は打ってやる』と、いう気持ちを持って臨めと。いくら打てなくても、おれは村田修一だし」。チームとは対照的に調子が上がらない。だが「僕が打てなくても、ほかの人が打てば勝てる」と、過度の重圧を背負うのではなく「(不調を)周りに影響させる必要はない」と、悪影響だけは与えまいと決めている。丸刈りは周囲に余計な気を使わせないための気配りでもあった。

 チームメートも心意気を、がっちり受け止めて一丸となった。前夜の16安打に続いて15安打。村田も6回の第4打席で左前打を放ち「得点圏とか言ってる場合じゃない。1本出たことを明日につなげたい。ここまで戦ってきたんだから最後まで1戦1戦やっていくだけ」。原監督が言う「枢軸の中の1人」が、もがきながらも必死に輪に加わった。主将の阿部は「(村田に)1本出てベンチも盛り上がった。チームとして、いい姿だと思う」と、うれしそうに、みんなの思いを代弁した。【為田聡史】