ゴジラが聖地に戻ってくる。巨人や大リーグで活躍した松井秀喜氏(39)が、8月8日に甲子園球場へ赴き、夏の全国高校野球選手権大会の開会式をスタンドから見届けることが24日、明らかになった。大会第1日の試合もそのまま観戦する。星稜高校時代の1992年(平4)、明徳義塾戦で5打席連続敬遠の伝説を作った。野球界へ恩返しをしたい意向を強く持つ松井氏が、原点から再出発する。

 念願がかなう。松井氏は5月5日、東京ドームで行われた国民栄誉賞表彰式に出席した。現在は米国で生活しているが、8月に再び日本に戻り、夏の高校野球の95回記念大会の開会式を見届ける。そのまま第1日の試合も観戦する。関係者によると、松井氏は「本当に楽しみです」と話し、心待ちにしている。「星稜が出てくれればうれしいんですけれども、どこが代表校になるんでしょうか」と、ふるさと石川県の後輩たちが奮闘する姿にも思いをはせている。

 世界中から愛される「ゴジラ」のニックネームが定着したのは、92年春のセンバツだった。その年の夏、星稜の4番松井は5打席連続敬遠で伝説となった。日米でキャリアを重ねるにつれ「世界中、どこを見渡しても、甲子園のような大会はない」と、球児たちのあこがれでありつづける聖地に格別の思いを抱いた。現役生活に区切りをつけ、球界全体へ恩返ししたい気持ちが強い松井氏が、新たなステージへ進む第1歩として原点を選ぶのは自然の流れだった。

 単なる訪問ではない。今夏の大会第1日に、松井氏が甲子園へ足を運ぶことは重い意味を持つ。

 野球界は今、大きな転換期にある。6月18日、プロ野球経験者が高校、大学の指導者になるための資格を回復する研修制度が、日本学生野球協会で承認された。短期間の座学で元プロが高校の監督になれることとなり、プロアマ間のハードルはグッと下がった。国民栄誉賞を受賞したばかりの松井氏が甲子園入りすることは、今後球界が1つにまとまっていく上での象徴的な出来事となる。

 尊敬する大先輩と同じ道をたどる。長嶋茂雄氏は、巨人監督を退いた翌年の02年夏、たっての希望で夏の甲子園大会の決勝を観戦している。その年の12月にはアテネ五輪代表監督に就任した。野球界全体の利益を常に考えて行動し、自身の存在を惜しげなく還元してきた。ミスターと並んで表彰を受けた5月5日、松井氏は「日本の野球を、そして野球を愛する国民のみなさんの力に、少しでもなれるように努力していきたいと思います」と約束した。真夏の甲子園から、大きな目標への歩みが始まる。