<巨人0-4広島>◇29日◇東京ドーム

 鯉の勢いが止まらない。広島に10勝カルテットが完成した。大竹寛投手(30)が、7回6安打無失点で自身初の2年連続の2桁勝利に到達。球団で同一シーズン4投手が2桁勝利をマークしたのは、87年以来26年ぶりの快挙だ。残り3試合で借金もついに2まで戻した。元気のない2位阪神とも3ゲーム差。季節外れの鯉のぼりが優雅に泳いでいる。

 CSで戦う阪神をおびえさせる試合運びだった。1回に無死二、三塁の好機で3番キラが中前に2点適時打。電光石火で先制すると、あとは、盤石の投手陣に任せておけば良かった。

 先発大竹は気合が入っていた。序盤は緩急を付けた投球で、3回まで完全投球。勝因は中軸を封じたことだ。4回1死一、三塁で4番村田に対し、シュートでバットをへし折り、中飛に仕留める。6回1死満塁では、「ここが勝負だと思った」と145キロ直球で空振り三振を奪った。

 アクシデントも乗り越えた。7回2死二、三塁。長野への3球目は、三塁線へのファウル。だが、勝利を目前にした大竹は猛チャージをかけると、左足太もも裏がつった。ベンチから野村監督も飛び出す。マウンド横で足を伸ばそうとしたが、指揮官から「マウンドでストレッチはダメだ」とくぎを刺されて、ようやく冷静になった。1度ベンチ裏に帰り治療を受けると、その影響を見せず長野を二ゴロに打ち取る。7回6安打無失点で、自身初の2年連続2桁勝利を手にした。

 「1桁と2桁では全然違う。(2桁勝利が)3人でもすごいこと」

 前田健、野村、バリントンに続き4人目の2桁勝利。球団では87年の大野、川口、川端、北別府以来の快挙。12球団でも今季唯一の記録。日本一を狙える投手力と言っても過言ではない。

 打線は9回に2死一塁から石原が左前打を放つと、スタートを切っていた代走の上本が、一気に生還。隙のない走塁を見せつけた。投打ががっちりかみ合い、東京ドームで行われるCSファイナルステージの予行練習も完了。大竹は「ぜひ、戻ってプレーしたい」と高らかに誓った。CS進出決定後、次なる目標としていた勝率5割にも望みを残す。残り3戦で2勝1分け以上。9月は15勝7敗1分けと勢いに乗る今の広島なら、不可能な数字ではない。【鎌田真一郎】