<阪神5-7西武>◇28日◇甲子園

 見たくない光景が繰り広げられてしまった…。阪神の守護神、呉昇桓(オ・スンファン)投手が9回に1点リードを守れず、来日初黒星だ。無死一、二塁でバント処理をミス。三塁悪送球(記録は野選と失策)で22試合目にして初の救援失敗。さらに暴投で決勝点を献上してしまった。チームは7カード連続の初戦負け。5月月間負け越しも決まってしまった。虎よ、踏ん張ってくれ。

 初戦の呪縛なのだろうか。絶対的守護神には痛恨の苦笑だった。1点リードを呉昇桓に託した。来日から21試合連続で救援成功の必勝リレーだった。勝利を確信した虎党には、まさかの悲鳴が待っていた。悪送球して、暴投して、ガツン…。無表情で「石仏」と呼ばれる男も独り相撲に苦笑いした。3奪三振も3失点。開幕から2カ月で神話が崩れた。

 呉昇桓

 自分の投球ができなかった。

 先頭金子侑に簡単に打たれた。盗塁そして秋山に四球。不穏な空気が漂い始めた。三塁寄りの脇谷のバント処理に、中途半端な体勢で入った。通常とは逆、時計回りに振り返って、三塁封殺を狙う。犠打野選と記録された送球は、さらに乱れ、ファウルグラウンドを転々とした。同点に追いつかれ、なおも無死二、三塁。今度は栗山を空振り三振に仕留めた鋭いカットボールが、捕手日高の股間を抜けていった。自滅だった。

 和田監督

 あのバント処理なあ…。ちょっと体勢が悪かったからねえ。無理しなくて良かったけど。

 唇をかんだ指揮官は「それもあったかもしれないね」とバッテリーの呼吸も気遣った。この回マスクをかぶった日高は前日27日に今季初昇格したばかり。キャンプを通じ、初コンビ。藤井、鶴岡が相次いで離脱。清水に代打を送ったため、新人梅野より36歳の経験にかけたが、実らなかった。

 7回は新井、8回は今成が突き放した。2桁14安打も、中盤の拙攻が最後に響いた。4回は2点を奪ってなおも無死一、二塁。6回も同じ無死一、二塁の好機に、いずれも7番福留で強攻した。不調の下位打線で得点をもぎ取ることができず、和田監督も「6回、あそこで1点でも取っておかないといけなかったな」と悔やむしかなかった。

 7カード連続で初戦を落とした。虎将が「先手必勝」を連呼する交流戦で、「先手必敗」の苦しいパターンが続く。5月は13敗目で負け越しも決定。広島と巨人も負けたことだけが救いか。「今日はどうしても取りたいゲーム展開だったけどね。こういうこともある。とにかく引きずらんように」。肌寒い夜風に吹かれながら、和田監督は必死に前を向いた。【近間康隆】

 ▼阪神が西武に逆転負けし7カード連続で初戦黒星。開幕から19カードでの初戦は7勝12敗と大きく負け越している。開幕巨人戦から4カード連続で敗退した後、6カード連続で勝利を収めたものの、ここ最近では交流戦の4カードを含め7カードで勝ち星がない。

 ▼阪神は5月9勝13敗、残り2試合を残し月間負け越しが決まった。4月は18勝8敗と大きく勝ち越したが、2カ月連続の勝ち越しはならなかった。