<ロッテ4-3オリックス>◇19日◇QVCマリン

 ロッテ2年目の若手、田村龍弘捕手(20)がプロ初のサヨナラ打を放った。同点で迎えた9回裏2死二塁、オリックス平野佳から中前打。初回にデスパイネの3ランで先制も、8回に同点に追いつかれるイヤな展開だっただけに価値ある殊勲打だった。光星学院(現・八戸学院光星)の主軸として甲子園を沸かせた田村が、今日20日に星稜(石川)と3回戦を戦う後輩へ大きなエールを送った。

 「頭の中が真っ白になりました」。中学以来記憶にない、プロでは初のサヨナラ打。一塁に向かい、喜ぶ佐藤一塁コーチを見て「あっ、打ったんだ」と勝利に気が付いた。手荒い祝福のあと、伊東監督と中村バッテリーコーチに、飛びついて抱きついた。サヨナラの味は「本当にうれしかった。幸せです」だった。

 ずぶとい男だ。9回2死二塁。いつもなら福浦やサブローの出番。「代打かと思って、気を抜いていたんですけど」と、20歳は平気で本音を言う。だが、代打はなし。打席に立つと、相手の守備を見る。「中堅が深い。センター返しでサヨナラだと、冷静でしたね」。マウンドは守護神平野佳。150キロ台の直球に「直球を狙っても、クイックも速いし。全くタイミングが合わなかった。やばいなあ。バットに当てよう」とシンプルな思考回路で振ったサヨナラ打だった。

 2年目で初めてのお立ち台。実は試合前に中村バッテリーコーチとの雑談で「今日、自分がお立ち台だったら、何を言いましょう?」と話していたという。同コーチからは「ない、ない」と軽くあしらわれていたが、大胆な予言(?)が現実になった。

 伊東勤監督(51)も、田村のずぶとさを買っている。「キャッチングもいいし。リードの思い切りがいい。大胆で逃げない」と言う。捕手出身の伊東監督は、捕手の評価は特に辛口。その監督も一目置く、ふてぶてしさ。新人時代から、悠然とした打撃フォームと堂々たる風貌に、チーム関係者は「高卒新人に見えない。オッサンだよ」と話していた。持ち味の強心臓が生んだサヨナラ劇だった。

 2年前は、光星学院の主軸として甲子園を沸かせた。「3年の時の1年が出ているので、試合は見たい」と話すが、差し入れは「(巨人)坂本さんがいるから、僕は何もしなくてもいいでしょう」とニヤリ。どんな局面でもずぶといのが、田村だ。【金子航】

 ◆田村龍弘(たむら・たつひろ)1994年(平6)5月13日、大阪府大阪狭山市生まれ。中学ではオール狭山ボーイズ所属。光星学院(青森)で1年春からベンチ入り。2年春から4季連続甲子園出場し、2年夏から3季連続準優勝。U18世界選手権では高校日本代表の中軸として活躍。北條(阪神)は中学、高校時代チームメート。高校通算37本塁打。12年ドラフト3位でロッテ入団。174センチ、77キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸630万円。

 ▼田村と森の12年春夏甲子園決勝

 センバツは森(2年)が1番捕手で藤浪(3年=阪神)とバッテリーを組む大阪桐蔭が7-3で、田村(3年)が3番捕手の光星学院に完勝。森は3打数無安打、田村は5打数3安打。史上初の春夏連続同一カードとなった夏も、3-0で大阪桐蔭が勝利。森、田村ともに4打数1安打だった。