体重203キロを誇る関取2番目の重量力士、十両天風(24=尾車)が紹介してくれたのは、東京・両国国技館からも程近い、森下駅の近くにある創業43年の「キッチン ぶるどっく」。カウンター8席の奥には座敷もあり、王道の洋食メニューが並ぶ。天風が“おやつ代わり”に食べるのが「最高です。2つの味が絶妙にまとまる」という「ブルオム・シチュー」(1350円)だ。

2年前に登場したぶるどっくのブルオム・シチュー。これぞ洋食屋の味!
2年前に登場したぶるどっくのブルオム・シチュー。これぞ洋食屋の味!

 ふわふわの卵でケチャップライスを包むと、仕上げに注がれるのはキラキラと輝くビーフシチュー。牛ばら肉に焼き目を付けたあと、ブイヨンで5時間、コトコト煮込んだ逸品だ。肉は柔らかく、口に入れた瞬間にほぐれる。ケチャップライスとも相性抜群で、酸味と甘みの加減が絶妙にマッチ。添えられたニンジングラッセの甘みも程よい。グルメでも知られる天風の言葉を思い返して、ただただ納得。「おいしい」を通り越して「ザ・洋食」の安心感で、おなかも心も満たされた。

フワフワの卵の下はケチャップライス
フワフワの卵の下はケチャップライス

 店を仕切るのは、桑原秀子さん(63)。11年に亡くなった夫・幸彦さんの味を守り続けている。「最初は(病院から)戻ってくると思っていたけど、次第に『覚えなきゃ』と思って。調理の仕方はずっと見てたから、病院のベッドで答え合わせしてねえ」。冷凍食品を一切使用しないこだわりがあるが、その分、仕込みも重労働。「けんしょう炎になったこともあるよ」と笑顔で語る姿は、なんとも頼もしい。

 創業当時から変わらぬ味を守り、人気ナンバー1は「煮込みハンバーグ」(800円)。手ごねのハンバーグからは肉汁があふれ、手作りならではのおいしさを味わえる。ブルオム・シチューは、2年前に息子が考案した新メニュー。伝統を受け継ぎながら、新たな挑戦も忘れない。そんな努力もあって、特に昼時は大賑わいだ。

創業当時から変わらぬ鉄板メニュー、煮込みハンバーグは抜群の安定感
創業当時から変わらぬ鉄板メニュー、煮込みハンバーグは抜群の安定感

 現役では幕内栃煌山(29=春日野)、徳勝龍(29=木瀬)らも訪れるという。だがそこは、老舗。生前の元大関北天佑とは家族ぐるみの付き合いで、故・北の湖前理事長も平幕時代から足繁く通っていたという。「あっという間だね。時代は流れるものだよ」と秀子さん。往年の力士たちも愛した「懐かしの味」が、ここにある。【桑原亮】

店の外観。左上は天風
店の外観。左上は天風

◆キッチン ぶるどっく

住所:東京都墨田区千歳3-1-11

電話:03・3633・1861

店の内観
店の内観