数年後、日本ボクシング界にとってターニングポイントだったと言われる試合になるかもしれない。21日(日本時間22日)に米ラスベガスで行われるWBC世界スーパーフェザー級王者・三浦隆司のV5戦は、大げさかもしれないが、それぐらいの爆発力を秘めている。今年の下期最大の注目カード、コット-アルバレスのWBCミドル級タイトル戦をメーンとした大型興行のセミで、無敗の同級1位バルガスを迎え撃つ。

 これまで日本人が立ったことのないほどの大舞台。インパクトのある勝ち方をすれば、米国リングから継続的に「お呼び」がかかる可能性は高い。アジアの無名選手から世界の頂点に上り詰めたマニー・パッキャオのようなアメリカンドリームをつかむきっかけとなることさえ考えられる。

 現時点で「三浦」と聞いて、「ボクシング」とつながる人は、そう多くないだろう。控えめな性格も影響してか、どちからと言えば“地味”な印象の方が強い。だが、ひとたびリングに上がれば、試合は面白く、とにかく分かりやすい。殺気に満ちたような目で入場すると、チャンスと見るや豪腕を振りかざし、相手をなぎ倒しにかかる。米国初陣にも「リングに上がれば1対1。どんな場所でもそれは変わらない。もちろん今回もKOを狙う」と頼もしい。

 11月は、村田諒太も米デビューを果たし、日本人がラスベガスで2度リングに立つ。一昔前の「憧れ」から、現実的な舞台に変わりつつある。村田の試合前に現地で取材をしていると、海外の記者から「ミウラとウチヤマは再戦しそうか?」と聞かれたこともあった。日本でもなじみの深い「怪物」ローマン・ゴンサレスが、米ケーブルテレビ大手HBOと契約を結んだことも影響し、軽量級を見る目は明らかに変わった。

 「ロマゴン」との対戦が期待される井上尚弥にもオファーが届いている。内山高志、山中慎介という大物2人も海を渡るチャンスを待っている。4団体が公認となり、国内のボクシング界は「誰が強いのか分かりにくい」というジレンマに陥った。三浦には、そんな閉塞(へいそく)感を打ち破るとともに、日本男児の強さをアピールしてもらいたい。【奥山将志】