WBO世界ミニマム級2位の田中恒成(19=畑中)が、日本人最速5戦目で世界王座を獲得した。同1位フリアン・イエドラス(27)を12回3-0の判定で下した。井上尚弥の持つ国内記録(6戦目)を更新し、史上4人目の10代世界王者が誕生。父斉(ひとし)トレーナー(48)に厳しく育てられた高校4冠の「中京の怪物」が、重圧をはねのけてベルト奪取に成功した。

 二人三脚で支えてきた父斉氏も、歓喜に浸った。「恒成が世界を取った時に、一緒に写真撮るのが夢だった」。高校4冠時やプロ過去4戦後は拒否した記念撮影に、笑顔で加わった。

 柔道黒帯で、元腕相撲の日本王者。空手でも指導者になり、息子2人がボクシングを始めると12年にはトレーナー資格を取った。口癖は「男前に育てる」。男前とは、強さと優しさを兼ね備えること。「空手もボクシングも直接打撃。痛みを知る。殴れば痛い。それが、分かれば人に優しくなる。何でも一生懸命やってるヤツは、愚痴を言わない。夢語りよる」。

 幼いころの田中に、時間無制限の腕立て伏せなど厳しい練習を課したが、飽きさせない工夫もした。ろうそくを立て、炎の寸前までパンチを打たせた。力みなく打てば、空気の流れも直線的で炎は消えた。「子供はすごい喜ぶねん」。飛ばした風船も、標的にさせた。子供が夢中で殴り、蹴る間に、斉氏がこっそりと画びょうで風船を割り、自分の力で割ったと思わせたことも。そうして、楽しさと達成感を味わわせた。「一生懸命やってれば、一生懸命応援してくれる人もできる」。強烈なパンチを受けて指を骨折したこともあったが、これからも誰より近くで支えていく。