タイソン流「無心」で手応えあり。ボクシングのWBA世界ミドル級王座決定戦(5月20日、東京・有明コロシアム)で初の世界戦に臨む同級2位村田諒太(31=帝拳)が26日、都内のジムで練習を終えた後、「結構面白くて」と最近の読書について切り出した。手にしたのは14年に日本でも出版された元統一世界ヘビー級王者マイク・タイソンの自伝「真相」。自宅の酸素カプセルの中で読みふけり、タイソンの師カス・ダマトの言葉が心に残った。

 「考えるのをやめろ」。

 同級1位アッサン・エンダム(フランス)との決戦が待つ今、試合に臨む心得を説いた言葉が響いた。この日、ここまで最長10回のスパーリングを消化したが、「スパー中は何も考えないようにしてました」。結果、「右もきれていて、良いスパーだった」と納得の予行演習となった。

 ここまでは不出来が続いたが、一変した。先週までの重い足運びは消え、最短距離の前進ですっと距離を詰めての強打でパートナーを追い詰めた。練習前は「強いパンチを打つためのジャブ」を意識したが、スパー中は無心で体を動かし、成果につなげた。

 試合まで4週間を切り、準備も整う。ジムに届いた特製Tシャツには「BELIEVE IN TWO」の文字が躍った。「TWO」とは、ロンドン五輪での金メダルに続くプロでの世界王者戴冠。「ただ試合に勝って、恩返ししたい」。その時はもうすぐだ。【阿部健吾】