北京五輪柔道男子100キロ超級金メダリストの石井慧(21=国士舘大)がグレイシー柔術の道場に入門する計画があることが分かった。10月31日、関係者が明かした。来春にも米ロサンゼルスのアカデミーに入り、1カ月ほどの期間で総合格闘技の基本を徹底的に身につける。石井はこの日、東京・文京区の全柔連を訪れ、異例の手渡しで事実上の引退を意味する強化指定選手辞退届を提出。3日に大阪市内で行われる会見でプロ入りを正式に表明し、新たな挑戦に乗り出す。

 石井がグレイシー柔術をマスターし、柔道最強から総合格闘技最強の男へと進化を遂げる。全柔連に辞退届を提出したこの日、新たなプロ格闘家へ向けたプランが明らかになった。「石井はロサンゼルスにある道場に1カ月ほど行って修行をしたいと話してる。ブラジルなどから若くてハングリーな猛者が集まる中で自身を磨きたいという理由です」と関係者が明かした。

 「400戦無敗」と称されるヒクソン・グレイシーが創設したグレイシー柔術アカデミーなどが候補に挙がる。石井は以前からヒクソンの人格と技術に尊敬の念を抱いており、実現はしなかったが、五輪前の5月、ヒクソン来日時は本気で対面を希望したほど。寝技から関節へ移行する技術の習得は総合格闘家として必要不可欠なだけに、グレイシー柔術はうってつけ。「住所などはもう調べているんです」とも明かしており、「入門」は来春になる可能性が高い。

 この日は午後1時すぎに金建龍弁護士と後援会関係者の3人で全柔連を訪れ、津沢事務局長に辞退届を提出。約15分間、言葉をかわした同事務局長によると「柔道でここまでなれたので、これからしっかり頑張っていきたい」と決意を表明したという。悩んだ末に10月30日夜にサインした辞退届は全柔連に受理され、即日で強化指定選手から除外された。「6年間現職をやっているが、(直接渡されるのは)初めて」(同事務局長)という異例の手渡しで、3日のプロ転向表明へ向けた環境を整えた。

 1日から始まる全日本学生体重別団体優勝大会(尼崎市)の会場には足を運び、国士舘大柔道部の応援をする予定。総合格闘技デビュー戦の時期については慎重に考慮していく方針で、「今はとにかく自由に練習をしたい」と周囲に話しているように、今後は「総合格闘技モード」の練習を進める。恵まれた身体能力、柔道の技術にグレイシー柔術の要素を加え、「真の最強」を目指す。