プロ総合格闘家に転向した北京五輪柔道100キロ超級金メダリスト石井慧(21=国士舘大4年)が、世界最大の米総合格闘技団体UFC参戦を決意したことが16日、明らかになった。日本のメジャー団体DREAM入りが秒読みとみられていたが、柔道家時代からのあこがれだったUFCへの思いを捨てきれずに翻意。来年3月にも渡米してUFCファイターが多数在籍するジムでトレーニングを積む予定で、早ければ来夏の団体デビューを目指す。

 石井が進む道を決めた。都内での練習を終えたあと、UFC参戦の意志を明かした。「決めました。自分の中では最終的にUFCしかありませんでしたから」と断言。「確かに日本で何試合かこなして…とも思ったけど、自分が持っている(五輪金メダリストという)肩書は、電車でいえば特急切符。なのに鈍行で行くのもどうかと思って」と続けた。

 先月3日のプロ格闘家転向宣言以降、DREAM関係者と参戦へ向けての下交渉をスタート。同団体を共催するFEG谷川貞治イベントプロデューサー(EP=47)とも会い、同18日の紫綬褒章授章式直後には「意中の団体?

 決めてあります」とDREAM入りをほのめかしていた。

 だが「子供のころからの夢だった」というUFCへのあこがれを捨てきれなかった。しかも「直接、行った方が後がない」と退路を断って米国に乗り込む決意を示した。通常は、団体との正式契約を交わしてから公表するのが一般的。だが、「DREAM関係者の方やファンに思わせぶりなことをしてはいけないと思った」と、異例の「交渉前発表」となった。

 UFCの魅力について「野球でいえばメジャーリーグ。ヘビー級の強い選手もたくさんいるし、本物だと思う」。また、日本のメジャー団体と違って「ひじ打ちOK」というルールも適用している点も挙げ「何でもできるバーリ・トゥード(ポルトガル語で「すべてが有効」の意)だから」。制約の少ないUFCでこそ、真の世界最強という称号も得られるという考えだ。

 もっともUFCは、総合格闘技で実績に乏しい選手を簡単にオクタゴン(8角形のリング)に上げないほど、選手の力量の見極めに厳しいことでも知られている。「五輪柔道金メダリスト」の肩書があるからといってすぐにメジャーデビューできる保証はない。一方でUFCにはWECというマイナー団体もある。石井は「総合格闘技では自分は白帯。WECからでも全然構いません」と、下積みも覚悟している。

 UFCとの交渉については「まだ何も」と石井。だがUFCファイターを多く輩出する総合格闘技ジムのアメリカン・トップチーム(フロリダほか)の名前を挙げ「来年3月ぐらいには渡米して環境になじむか、ストレスがたまらないかとかを確かめたい」。同ジムで練習しながら実力を評価してもらい、UFCとの橋渡し役となってもらう青写真を描く。その上で「デビューは早くて来夏、来秋ぐらいになると思います」。石井にとっての09年は、人生の一大転機となることは間違いなさそうだ。