三沢さんの47回目の誕生日に、「長年の夢」が実現へ動き始めた。13日の試合で亡くなったプロレス団体ノアの三沢光晴さん(享年46)の事故死を受けて、ノア、新日本、全日本の主要3団体のトップが18日、都内で行われた自民党文部科学部会・文教制度調査会に出席。三沢さんが取り組んできた「プロレス統一機構」を設立すべきとの見解で一致。7月にもプロレスラーのライセンス制度を確立させる意向を固めた。一方で年齢制限を撤廃する臓器移植改正法案が衆院で可決。三沢さんが力を入れてきた臓器移植への支援活動が実を結んだ。この日夜には、都内の寺院で三沢さんの通夜が行われ、レスラー仲間ら約100人が参列した。

 三沢さんの誕生日に、プロレス界が大きな第1歩を踏み出した。初めて公式の場で顔をそろえた主要3団体のトップが、都内の自民党本部で合同会見。早急な統一機構設立の必要性を訴えた。全日本の武藤社長は「50年のプロレスの歴史で、先輩方が成功しなかった試みに、もう1度トライしていくことがプロレスのためになる」。ノアの仲田統括本部長は「プロレスを幅広く認知してもらい、メジャーにすることが三沢の遺志」と話した。

 この日、衝撃的なトップ選手の試合での死亡事故を受けて、自民党から健康管理などの現状を把握し、再発防止に努めたいという理由で、3団体のトップが集められた。森喜朗元首相ら議員らと約40分、意見を交換した。その中で複数の議員からプロレス団体を統括する機構設立の必要性を訴える声が相次いだ。森元首相からは「プロレスはスポーツなのか?

 興行なのか?」と問われ、野球やサッカーなどが加盟している、日本プロスポーツ協会への加盟を暗に勧められた。

 プロレス界には業界を統括する団体がない。元プロレスラーの馳浩衆院議員は「サーカスと同じように、興行ととらえられかねない。だから統一ルールなどを作るべきだ。(ボクシングのように)選手の定年の話なども議論した方がいい」と話した。

 くしくも三沢さんの夢だった統一機構設立が、三沢さんの死をきっかけに、政界から後押しされる形となった。「プロレスをメジャースポーツに」を目標に、三沢さんは06年にグローバル・レスリング連盟を立ち上げた。コミッションの設立、レスラーのライセンス制、統一ルールの策定などを目標に掲げた。当時は新日本と全日本の主要2団体が加盟せず、構想のまま終わった。しかし、今年3月からその2団体を交えて、2度話し合いの場を持っていた。6月24日に3度目の会合が予定されていた。

 三沢さんの事故を受けて、具体的な再発防止策も議論された。仲田本部長は「レフェリーや対戦相手は、戦いながら相手の状況を観察してもらう技術を身に付けてほしい」と話した。そのために、まずライセンス制度づくりを急ぐ。武藤社長は「7月をメドにライセンス制度ができる予定。早急に協会もつくらないと」。プロレス界が一丸となって三沢さんの遺志を引き継ぐ。【高田文太】