<プロボクシング:WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦>◇27日◇東京・後楽園ホール

 金髪とタトゥーの「反逆の世界王者」が誕生した。WBC世界スーパーフライ級4位佐藤洋太(27=協栄)が同級王者スリヤン・ソールンビサイ(23=タイ)から3回に2度のダウンを奪取。その後もポイントを重ね、3-0の判定勝ちで悲願の王座奪取を成し遂げた。

 佐藤の世界挑戦を支えたのは、スパーリングパートナーを務めた同じ岩手出身の先輩、WBA世界ミニマム級王者・八重樫東(29=大橋)だった。1月下旬から計54回、スリヤンの動きを再現した直接指導を受けた。「パンチが当たらないと、迷いが顔に出る」としかられ、この日も試合前に電話で10分間、心構えを教わった。07年6月の世界初挑戦で苦杯をなめた先輩の言葉は身に染みた。

 佐藤は「八重樫さんのプレッシャーは本当にすごかった。それが、今日の結果につながった」と感謝した。昨年末、地元紙の企画で対談した際に「岩手のために、東北のために一緒に頑張ろう」と言われた。それまで「東京に住む自分が、震災のことを口にしていいものか」と悩んでいた佐藤に、郷土への思いを力に変える機会を与えてくれた。

 会場で観戦した八重樫も「長期防衛できる戦い方だった」と喜びをかみしめた。デビュー以来、佐藤のトランクスに縫い付けられてきた「みちのく魂」の刺しゅうの上に、2人の絆で勝ち取ったチャンピオンベルトが巻かれた。【山下健二郎】