今年の遠藤はちょっと違う。西前頭5枚目の遠藤(24=追手風)は1日、大阪・堺市の部屋で稽古を行った。日曜日とあって、近隣住民らファンが約150人も見学。初めて幕内上位に位置した昨年同様のフィーバーとなったが、稽古後は雨中にもかかわらず、サインや写真の求めに応じた。昨年とは違う心のゆとりで、春場所(8日初日、大阪・ボディメーカーコロシアム)で新三役昇進に挑む。

 稽古後の風呂上がり。宿舎まで歩く約70メートルの道すがら、傘を差した遠藤は何度も足を止めた。待っていたファンから色紙を受け取ってサインし、写真撮影にも気さくに応じた。約15分間。丁寧さを問われると、「そうですね」と静かに笑った。

 注目度は相変わらずだった。場所前、最後の日曜日。十両大栄翔と14番こなした稽古場には入れ替わり、人が訪れた。幾重も列ができ、脚立に上る人、子供を肩車する父親もいた。その数、約150人。土日で約300人が訪れた昨年とまるで変わらない。稽古後も人は増え、幕下の安彦と大翔鵬が振る舞ったちゃんこ約500食は、瞬く間になくなった。変わらぬ熱気。その中で変わったのは、ファンへの対応だった。

 初めてフィーバーを経験した昨年春場所前。相撲協会や部屋のイベントなどを、昼寝の時間を割いてこなした。慣れないことへの疲れはピークに達し、その中で訪れるファンに対応すれば、きりがない。付け人に必死にガードされる中、目を伏せて宿舎まで歩いた。

 今年も、後援者らへのあいさつ回りやイベント数は変わらない。「昼寝はやっぱり、できていない」と苦笑いする。それでも、昨年で体に染みた「教訓を生かさないと」。下手な緊張感はどこにもない。ファンへの対応には、昨年と違う心のゆとりが広がっていた。

 前頭5枚目は通常、上位と対戦しない。だが、白星が込めば上位戦、そして新三役昇進は近づく。「明るい人が多いから楽しい」という大阪で、遠藤はその機会を、一回り大きくなった心でつかむ。【今村健人】