異例の綱とり宣言が飛び出した! 日本相撲協会は27日、東京・両国国技館で名古屋場所(7月12日初日、愛知県体育館)の番付編成会議と臨時理事会を行い、夏場所で初優勝を果たした関脇照ノ富士(23=伊勢ケ浜)の大関昇進を満場一致で決定した。江東区内の伊勢ケ浜部屋で行われた昇進伝達式で、照ノ富士は「さらに上を目指します」と口上を述べた。

 強い意志を言葉に込めた。照ノ富士は、使者の友綱親方(元関脇魁輝)桐山親方(元小結黒瀬川)を前に、こう口上を述べた。

 「謹んでお受けいたします。今後も心技体の充実に努め、さらに上を目指して精進いたします」

 これまでの口上では「大関の地位を汚さぬよう」や、四字熟語を用いたものが多かった。だが、全く違う。平成生まれ初の大関誕生。その目はすでに、その先を見据えていた。

 2日前の優勝一夜明け会見後から、心は決まっていた。紙に平仮名で書き、直前まで練習を繰り返した。前日にはきっぱりと「自分の気持ちを言います」。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)おかみの淳子さんと相談して選んだ言葉は「心技体」だった。淳子さんは「シンプルだけど重い言葉にしようと思った。三位一体で頑張ってほしい」と期待を込めた。

 これまで有言実行で番付を駆け上がってきた男の綱とり宣言。周囲も反応し、工夫を凝らした準備に入った。懸賞も懸けるアート引越センターや空調総合メーカーのダイキンなどから、新たに3つの化粧まわしが贈られることが分かった。それも“スピード出世仕様”だという。

 横綱に昇進すれば、土俵入りでは三つぞろえの化粧まわしを使うため、従来のものは使えなくなることも多い。早ければ年内に昇進する可能性もあり、せっかく作る3本も無駄になる恐れがある。そこでこの日、業者と関係者が絵柄を相談し、横綱昇進後も太刀持ち、露払い分を追加すれば使えるデザインで製作することを検討した。

 親方も「まだ覚えなきゃいけないことがたくさんある中で大関まで昇進した」と、潜在能力の高さには太鼓判を押す。次世代を担うモンゴルの大器は、歩みを止めるつもりはない。【桑原亮】

 ◆大関昇進時の口上 過去の口上で「さらに上を目指す」と綱とりを掲げた力士はいなかった。最も多いのは「大関の地位を汚さぬよう」「大関の名に恥じぬよう」。初代貴ノ花や千代の富士、北勝海に、照ノ富士の師匠の旭富士もそう。最近では曙に朝青龍、白鵬、琴奨菊と稀勢の里も用いており、まずは「大関」を守るという気概が言葉に込められた。その後に「一生懸命」や「不撓(ふとう)不屈」などの四字熟語が続くケースが多かった。