大関琴奨菊(31=佐渡ケ嶽)が西前頭2枚目碧山を突き落としで下し、無傷7連勝を挙げた。10年ぶりとなる日本出身力士の優勝へ、キーワードは超有名ゲームからヒントを得た「気力」。第1関門となるきょう中日は、大関稀勢の里を迎え撃つ。

 出足を止められても、琴奨菊に焦りはない。左を差して土俵中央で組み合うと「(狙いは)相手の軸をずらすこと。雑になったらダメ」。勝機をうかがって攻め込むと差し手を引いて突き落とし。201キロの巨漢を転がした。「引いちゃったのは反省しないといけない。でも、自分の考えた流れの中で準備したことが出た」と冷静に振り返った。

 14年名古屋場所で8連勝して以来の初日から7連勝。だが前半戦は好調でも、終盤で負け込むことも多かった。「中日を過ぎると、一番きつい。そこは体力じゃないんだよね」と言うが、当時とは「全然違う」と精神面の成長を強調する。朝稽古後には「面白い例えがあるんだけど…」と、有名ゲーム「ドラゴンクエスト」を例に語り始めた。

 「ドラクエは攻撃面では体力を使うから、数値が減るでしょう? 強い相手になると魔法も使わないといけない。必殺技を使ったら数値が減る。『やくそう(薬草)』とかを飲まないと回復しない。それが気力。ゲームもちゃんとできてるんだな」。

 ドラクエでは魔法を使う際にマジックパワーを消費し、回復アイテムなどで補う。相撲に置き換えれば、身を削って戦う体力に加え、上位戦となれば、より強力な技を繰り出さなければ勝てない。必要なのは体力だけではなく気力。ゲームから勝負のキーワードを得ていた。

 全勝は白鵬と2人。06年初場所の栃東以来、10年ぶりの日本出身力士優勝の筆頭候補となったが、自宅には、場所後に結婚式を控える妻祐未さんという「やくそう」がある。折り返しとなる中日は、第1関門の稀勢の里戦。猛者ぞろいの後半戦へ、気力十分の最古参大関は、土俵でドラクエばりの魔法を繰り出すつもりだ。【桑原亮】

 ◆ドラゴンクエスト 86年にエニックス社(現スクウェア・エニックス)から発売されたロールプレーイングゲーム(RPG)。通称ドラクエ。今年で30周年を迎え、欧米にも進出。さまざまなゲーム機器でシリーズ化され、現在でも新作を発表し、ミリオンセラーを達成している。