新十両の宇良(23=木瀬)は、異色の相撲を取る。173センチ、127キロの体で低く構え、時には一気に押し、時には足を取って揺さぶる。超個性派の新星は、いかに成長してきたのか。連載「低空の魔術師 新十両宇良」で、秘密に迫る。

 4歳から通った寝屋川相撲連盟では、元幕下立花の菊池弘至さん(56)が師匠だった。「強く当たれ。前に出ろ」と教わった。

 菊池さんが胸を出すぶつかり稽古は、子供には長く厳しい。「土俵にたたきつけても(宇良)和輝は泣きもせずバンバン立ってきた。舞の海さんには失礼だけど、和輝は『舞の海2世』じゃない。大きい相手にもバチンと当たっていけるから」。低い体勢から出す技ではなく、菊池さんは宇良の押す力に太鼓判を押す。

 体操とレスリングの練習もこなした小学生時代。相撲も厳しい稽古を積んだが、体が思うように成長せず小6でも139センチ、42キロと小柄で勝てなかった。いつ折れてもおかしくなかった心は、母信子さん(49)が支えてくれた。春場所は毎年観戦に連れて行ってくれた。子供弓取り式用に、1日がかりで化粧まわしも作ってくれた。「しんどい」「疲れた」は家では禁句。「自分で決めたことは必ずやる」も家訓だ。すり足のノルマを昼間できず、夜中に起きてやり遂げたのも、母の教えがあってこそだ。

 史上4位の所要7場所で関取になった宇良は言う。「勝てるようになったのは大学3年から。あきらめずにやってきたから、今がある」。母への感謝も忘れず、今日から始まる十両の土俵に立つ。【木村有三】(おわり)