第72代横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)は今日25日、春場所(3月12日初日、エディオンアリーナ大阪)番付編成会議と臨時理事会を経て、正式に誕生する。前日の24日に会見し、横綱土俵入りの型を「雲竜型」とすることを明かした。亡き先代師匠の鳴戸親方(元横綱隆の里)の「不知火型」と悩んだが、先々代の師匠の初代若乃花の型であること、そして自分自身の相撲タイプに合わせて決断した。

 少し、いたずらな笑みを浮かべていた。「言っていいのかな」。横綱土俵入りの型を問われて。今までなら秘密にしたかもしれない。だが、稀勢の里は明かした。「雲竜型を希望しました」。その思いを続けた。

 「昔から雲竜型に憧れがありました。二所ノ関一門も…先々代の二子山親方(横綱初代若乃花)もそうでしたしね。そういう意味も込めて選びました」。

 子どものころからよく見た大相撲中継。当時は貴乃花が全盛期だった。テレビの前で雲竜型の土俵入りをまねた。少なからず憧れがあった。ただ、先代は不知火型。悩んだという。

 決め手は2つ。1つは雲竜型の意味だった。「攻めと守り。自分はそういう相撲だから。どっちが合っているかという意識で」。積極的な攻めを意味する不知火型ではないと判断した。

 もう1つは一門への思いだった。隆盛を築いた、先代の師匠に当たる初代若乃花は雲竜型。「自分からのお礼は若手を引っ張り上げて、1人でも多くの関取衆、三役、大関を出すこと。『お礼返し』の気持ちで二所一門の連合稽古に参加していきたい」と受け継ぐ。

 歴代横綱の土俵入り映像は見てきた。先代の力強い土俵入りの写真は昔、稽古場にあり「15歳にしてたたき込まれている」。型は違うが、先代流になるのは間違いない。ただ、自身の姿は「想像もできない」と笑った。練習は一門の先輩、芝田山親方(元横綱大乃国)が指導。太刀持ち高安、露払いは松鳳山が務める。

 この日は一門内外の若い衆が東京・江戸川区の部屋を訪れて麻もみを行った。翌25日は昇進伝達式。口上に特別な言葉はない。「自分の気持ちをそのまま伝えられればいい。そういう伝達した言葉を(自分で)しっかり受け止めたい」。準備は整った。【今村健人】