元大関魁皇の浅香山親方が、通算1047勝で並んだ横綱白鵬をたたえた。24年間かけて積み上げた大記録に追いつかれたが「大関の自分と比べるものではない」と謙遜。11年名古屋場所で、当時歴代1位の1045勝で千代の富士に並んだ時の心境を交えながら、白鵬への思いを語った。

 審判員として土俵下に座っていた浅香山親方は、白鵬に並ばれる瞬間を見届けた。「まだまだ通過点でしょう。俺からしてみれば忘れた頃に名前を思い出してもらえるだけでありがたい。(今後は)見ている人がどれだけ伸ばせるかを楽しんでもらえればね」。

 11年名古屋場所4日目に、1045勝で当時歴代1位の千代の富士に並び、1047勝まで星を伸ばした。「場所前からマスコミが記録の話をするからやらざるを得なかった」と振り返る。まわしを締めるだけでも足がしびれるほどの、腰の神経痛を患っていた。続けたのは、周りからの期待があったから。「数字にこだわりはなかった」と大記録達成後、3勝7敗となった翌11日目に引退した。

 現役時代、最も合口が悪かったのは白鵬だった。「体の柔らかさ、足腰の強さ、反応。他の力士にはなかった」。33戦で6勝だけ。引退時、横綱5年目を迎えた白鵬は、優勝19回の大横綱になっていた。だからこそ、12年の白鵬も出席した引退披露宴のあいさつで「記録を抜くのは白鵬しかいない」と託した。当時を振り返り「あれだけの強さを見たら白鵬しかいないと思った。あんな強さを見せつけられたら自然とそう思う」。自分が1番だとは、全く思わなかった。

 期待は尽きない。「1100勝は普通に超えそう。優勝40回という新たな目標もある。これで終わりではない」。さらに「横綱は悪ければ休場、引退という地位。大関の自分と比べるものではない」。並ばれた悔しさはない。1人の親方として、相撲ファンとして、白鵬の快進撃を楽しみにしている。【佐々木隆史】