大相撲で史上最多45度の優勝を誇り、9月30日付で引退した間垣親方の元横綱白鵬(36)が1日、東京・両国国技館で、引退会見を行った。

      ◇     ◇

引退会見を映像で見ましたが、さすがに戦う顔ではなかったですね。これで本当にもう白鵬の相撲は見られないんだと思うと残念です。まずはお疲れさまと言いたいです。朝青龍に代わって一人横綱を張り日馬富士、鶴竜、稀勢の里と3人も横綱が誕生しながら「白鵬時代」でした。柔らかい体を生かし自分十分になれば強かった。ライバル不在で孤独だった中、よく頑張りました。

全勝優勝した名古屋場所が終わり、白鵬は99%引退するのではないかと思っていました。千秋楽の照ノ富士戦の相撲が、そう感じさせました。ここまでやらないと勝てないんだ、という相撲です。晩年の、かち上げや張り差し、だめ押しは目に余り、横綱経験者としては残念でした。

土俵態度がそうだったから、年寄襲名にあたり協会は誓約書を取り付けたのでしょう。45回も優勝し現役力士からリスペクトされた人が親方になる。数年先には、その言動を見てきた現役も親方になる。そうなると改革とは違う、伝統を覆すようなことがまわりの支持を得てしまうかもしれない。築いてきた伝統を守るためだったと思います。

今までは白か黒かの世界でしたが、親方になれば社会人1年生です。寛容な心で負けを素直に認めることも時に必要で、突っ張ってばかりでなく柔軟性も求められます。まずは警備の仕事、落ち着けば巡業部にも配属され、裏方さんや相撲関係者と接する機会も多くなるでしょう。相手は大横綱だ、と配慮されるでしょうが、それに甘んじてはいけません。チケットの買い方一つにしても「教えていただくんだ」という姿勢でいれば、大相撲がどれほど多くの人に支えられて今があるのかということも分かると思います。

白鵬がいなかったら相撲人気が続かなかったのは確かでしょう。「第69代横綱」の看板も一生、つきまといます。それを自覚して、一社会人としてこれからも相撲道を歩んでほしいです。(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)