AKB48川栄李奈(20)が26日、グループからの卒業を表明した。埼玉・さいたまスーパーアリーナで開催されたAKB48コンサートで発表。昨年5月25日、岩手県内での握手会で暴漢に襲撃されたショックから、握手会に出られなくなったことを理由に挙げた。

 20歳、苦悩の決断だった。メンバーの人事異動の発表の最後。茅野しのぶAKB48グループ総支配人(32)に「川栄李奈、卒業」と告げられると、涙しながらも、すっきりした笑顔でうなずいた。総監督の高橋みなみ(23)に「決めてた?」と尋ねられると「はい」と答えた。

 川栄 私は、去年の事件があって握手会に出られなくなって、AKBは握手会を大事にしているけど、私は出られないし、これからも出られることはないので。周りが「気にしなくていいよ」と言ってくれても、自分は気にしちゃってて。

 事件の後遺症は深かった。ステージに立てるまでにはなったが、見知らぬ人との対面は、いまだにできない。握手会の代わりにと、昨秋にファンとの交流SNSの755を始めたが、一部の心ないファンから「なぜ、握手会に出ない」となじられ、ショックでSNSを閉鎖したこともあった。10カ月間、悩み続けた。その間にTBS系連続ドラマ「ごめんね青春!」にレギュラー出演し、女優業に目覚めた。

 「ドラマに出させてもらって、すごく刺激を受けました。私はAKBじゃなかったら普通に通用しないし、一から勉強して夢を追いかけたいと思いました」。

 2010年、AKB48第11期研究生オーディションに合格。活動歴5年でファンへの心残りはある。先月24日の生誕祭では「私を必要としてくれる方がいる限り、頑張ります。握手会では会えないけど、劇場公演で」と話していた。何度も悩んだ末に、新たな夢に向かって歩むことを決意した。

 最後は湿っぽさを嫌って、「以上です。ありがとうございま~っす!」と軽い口調で締めると、高橋から「ノリで乗り切るな~。長くいる先輩からすると『川栄、早いよ』って本当に思う」と苦笑いで嘆かれた。卒業日は未定だが、6月6日開票の選抜総選挙にも出馬しない。事件の爪痕を突きつけられた卒業宣言だった。【瀬津真也】

 ◆川栄李奈(かわえい・りな)1995年(平7)2月12日、神奈川県生まれ。10年7月に加入。13年にフジテレビ系「めちゃ×2イケてるッ!」テスト企画に出演して以来、おバカキャラが定着。総選挙は、第3回から圏外→圏外→25→16位。愛称「りっちゃん」。血液型O。

 ◆AKB48襲撃事件 5月25日に岩手県滝沢市で行われたAKB48握手会で、川栄と入山杏奈が、のこぎりを持った男に握手レーンで襲われた。2人は手の骨折などの重傷を負い、盛岡市内の病院で手術を受けた。止めに入った男性スタッフを含む3人も負傷して入院。入山は現在も傷が完治しておらず、週3回のリハビリに通う。川栄同様に握手会には参加しておらず、2月13日の劇場公演では、AKB48をやめることも考えたと告白。「正直、まだ突然の大きな音や声には怖いと感じてしまいます」と話した。殺人未遂容疑で現行犯逮捕、起訴された梅田被告は、今年2月に懲役6年の実刑判決を受けた。